中国は華人の血を引く「親戚筋」を反日同盟の正式メンバーに引き込み始めた。シンガポール。2002年以来14回、毎年かの地で開かれるアジア安全保障会議(シャングリラ対話)はある意味、中国の「増長史」を刻んできた。ただ、5月末の安保会議に集まった各国国防相らは中国の傲岸無礼に加え、ヘビならぬ龍に睨まれたカエルを絵に描いたごとき気概なき宰相の見苦しい姿を目の当たりにしたはず。シンガポールのリー・シェンロン(李顯龍)首相(63)は国際秩序をかき乱す中国を露骨に弁護し、国際法を守る日本を罵ったのだ。
脅されるまま、中国に向かう危険な漂流に兆候は有った。国土面積が東京23区並みのシンガポールは、軍事的抗堪性/縦深性の限界から台湾に国軍を駐屯させている。攻撃された後の反撃や長射程兵器・戦闘機の演習域確保が難しいためだ。ところが2014年、中国人民解放軍の、あろうことか台湾侵攻を担任する南京軍区と合同演習を行った。大東亜戦争(1941~45年)時に華人の抗日拠点と化したシンガポールが先祖返りし、中国と軍事連携するのなら、わが国の輸入原油の9割が通航するマラッカ海峡への影響がゼロとはいえまい。
アジア安保会議での醜態
シェンロン氏の基調演説は酷かった。南シナ海の8平方キロという途方もない面積を埋め立て軍事基地を建設する中国を擁護。ベトナムやフィリピンの資源探査・開発を念頭に、他国も採掘・埋め立てをして軍事プレゼンスを強めていると訴えた。中国の埋め立て規模や狙いに目をつぶる知恵を働かせたつもりの演説は、無理筋の分惨めだった。米国と海洋権益を折半せんとする中国提唱の「新型大国関係」にも、太平洋は2大国を受けいれる十分な広さを持つ-と主張する中国に賛同。返す刀で、対日非難を、中国の常套表現で再生してみせた。
「過去の過ちを認め、日本国民は右翼の学者・政治家の非常識な歴史歪曲をはっきりと拒否すべきだ」
反日の素地は感じていた。シェンロン氏は靖国神社を首相として参拝した小泉純一郎氏(73)に対し「日本が占領した国に悪い記憶を思い起こさせる/戦犯をあがめる対象にすべきではない」と、既に説教を垂れていた。父のリー・クアンユー初代首相(李光耀/1923~2015年)も他の多くのアジア指導者とは違い、大日本帝國による植民地解放の側面を評価しなかった。クアンユー氏が2008年に披露した歪んだ中国観も、経済発展には政治的安定が必要だとして、国民の政治参加を激しく制限する開発独裁国の指導者を地で行った。
「一部国家指導者は中国の人権・チベット問題を理由に、北京五輪開会式をボイコットすると圧力をかけるが全く根拠がない/西側のチベット観はロマンチックな理想郷だが、中国にとっては封建社会・後進地域。中国はチベット支配後、身分制度や農奴を廃止し、病院・学校や道路・鉄道・空港を造り生活水準を向上させてきた」



