関西の議論

訪れてみたい「アニメ聖地」は東高西低…なぜか東京一極集中、有名な滋賀の「けいおん!」など落選

【関西の議論】訪れてみたい「アニメ聖地」は東高西低…なぜか東京一極集中、有名な滋賀の「けいおん!」など落選
その他の写真を見る (1/7枚)

 アニメファンの聖地巡礼のバイブルとなる「訪れてみたい日本のアニメ聖地88(2018年版)」が今夏発表された。出版大手や旅行業界大手など5社からなる「アニメツーリズム協会」(富野由悠季理事長)が海外を含むファンのウェブ投票をベースに、アニメ版権会社や関連自治体と協議して選出。四国のお遍路詣り「四国八十八ケ所」にならい、アニメの聖地周遊の広域観光ルートを作り、地方創生や訪日外国人客増加につなげる狙いがある。

 ただその結果は、「ガールズ&パンツァー」(茨城県大洗町)や「エヴァンゲリオン」シリーズ(神奈川県箱根町)など東の人気作品(聖地)が順当に選出された一方、「けいおん!」(滋賀県豊郷町)や「涼宮ハルヒ」シリーズ(兵庫県西宮市)など西の有名作品の多くが落選の憂き目に。落選した自治体からは落胆の声も出るが、なぜこんな結果になったのか。

「選ばれなかった人気の聖地」

 「大変に残念。今回選ばれれば(聖地として)再浮上したかもしれなかったのに…」。和歌山県美浜町の笠野和男副町長は無念さをにじませた。8月26日、発表された聖地には、アニメ「AIR(エアー)」と「美浜町」の文字はなかった。

 「AIR」は平成12年に原作のゲームが発売され、17年にアニメ化された作品。海に面した同町がファンの間で聖地として浸透していただけに、町も聖地88に入ることを期待していたという。

 近畿地方では、和歌山県に加え、人気アニメ「けいおん!」などの聖地がある滋賀県も聖地0の結果に終わった。

 旧豊郷小学校校舎群が「けいおん!」の聖地とされる豊郷町は、これまで校内に「けいおん!」ファンの憩いの場を設け、地元商工会も23年に軽音楽甲子園を開催。官民一体となって盛り上げてきたが、聖地が版権を持つアニメ制作側の公認でないことも影響し、落選したとみられている。

 同町の担当者は「投票順位は上位だった」といい、「選ばれなかった人気の聖地という立場をうまく活用して、街の活性化につなげたい」と力を込めた。

東高西低の現実

 アニメ聖地88は今回初めて選出され、東海地方までを東日本、近畿以西を西日本と区分けした結果、東日本57カ所、西日本28カ所、(ほかに展示施設など3カ所)で、このうち東京都が最多16カ所だった。西日本では、「AIR」や「けいおん!」のほか、昨年話題を集めたアニメ映画「この世界の片隅に」(広島県呉市)も落選した。

 また、人気ライトノベルでアニメ化もされた「涼宮ハルヒ」シリーズが落選し、同シリーズのパロディー作品「長門有希ちゃんの消失」(西宮市)が選ばれる変則的な選出もみられた。

 一方、東日本からは「君の名は。」(岐阜県飛騨市)、「ラブライブ!」(東京都千代田区)、「ガールズ&パンツァー」、「エヴァンゲリオン」シリーズなどが順当に選出された。

 東高西低の結果について法政大学大学院の増淵敏之教授(文化地理学)は「アニメ制作会社の東京集中が影響しているのではないか」と指摘する。

 日本動画協会によると、全国に622社あるアニメ制作会社のうち、542社が東京都内にある。このためロケ地などが関東や東日本に集中する傾向があり、どうしても東に偏りがちになるとの見方だ。

 さらに増淵教授は、2020年の東京五輪の影響も示唆。「開催地の東京近辺が、インバウンドを呼び込むため、聖地に選ばれやすかったのではないか」とみる。

 聖地は、国のクールジャパン事業でも活用される。また、同協会は地域創生への貢献も掲げるが、北海道大学大学院の岡本亮輔准教授(観光社会学)は「地方創生を考えれば、広域観光ルートに選ばれていない地域があるのは寂しい」と話す。

アピールかなった自治体も

 一方、西日本の自治体でも、積極的なアピールが実り、88カ所に選出されたケースもある。広島県竹原市では、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使い、同市が聖地のアニメ「たまゆら」に投票を呼びかけ、昨秋の中間投票では国内投票で1位。88カ所にも選出された。

 同市では作品の出演声優が結婚式を行うなど、自治体やファンだけでなく制作側も一体となり作品を盛り上げてきた。同市の担当者は「民間の方やファン、制作側が長い間、良い関係を持ち続けてきた結果だ」と話す。

 同協会は聖地の選定を今後も続けていく方針だが、東高西低の傾向は変わるのか。岡本准教授は「巡礼客の受け入れ態勢の整備が重要になる」と指摘する。

 また増淵教授は今年7月、「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督のアニメ制作会社「カラー」などが福岡にスタジオを設立したことに触れ、「制作会社の地方分散の動きも進んでいる」とし、「ファンの動きに目配りをすれば、おのずから西日本の聖地にもムーブメントは生まれてくる」と話している。(尾崎豪一)

Google検索で「産経ニュース」を優先表示。ワンクリックで簡単登録

会員限定記事

会員サービス詳細

ライフランキング

  1. 東大合格女子校ランク 62人合格の桜蔭が引き離す 女子学院、洗足、豊島岡も2ケタ合格

  2. グレイヘア、どう始める? 白髪生かしてありのままの姿、工夫で移行期を乗り切ろう

  3. 同志社国際高の平和学習と「表現の不自由展」の共通点 不満なら「サンモニ高校」つくれ メディアウオッチ 皆川豪志有料会員記事

  4. 観光客が殺到 好調な「江ノ電」が直面する“設備投資できない”ジレンマ

  5. 大阪・道頓堀をダイバーが水中清掃、出てきたものは… ごみゼロの日に戎橋も丸洗い

  6. 自然に溶け込むアーチ橋梁群 北海道・旧国鉄士幌線跡、水没と出現を繰り返す「幻の橋」も 行ってみよう廃線跡有料会員記事

  7. 東海道新幹線、2日夜~3日に急な運転見合わせや運休の可能性 台風6号、沖縄へ接近

  8. 森繁久弥さんの媒酌で結婚 「ゆくゆく結婚するんだからな。ナベシンでなく俺がするから」 話の肖像画 日本歌手協会会長・田辺靖雄<26>

  9. 「御三家」麻布 東大は現役6人増77人で全国5位 国公立医学部は理Ⅲ3人含む30人

  10. ファミリーマートにセブン銀ATM、サービス開始 行政手続きやチャージも