【活写 2021】答えは問いかけの先に ゼロ・ウェイストのまち 徳島県上勝町
更新 sty2105120006 緑に覆われた豊かな山の連なりを眺め、蛇行する勝浦川をヘリコプターでたどっていくと、屋根が「?」の形になった不思議な建物が現れた。ここは徳島県上勝(かみかつ)町。8割以上が山林で人口約1500人の田舎町だが、「環境」や「リサイクル」のキーワードでは日本で最も有名な町の一つだ。
この建物はリサイクルごみ集積場やリサイクルショップ、細かい分別を体験できるホテルなどを併設し、昨年5月に完成した「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」。ウェイストはごみや無駄、浪費を表す英語で、ゼロ・ウェイストとはごみゼロだけでなく、浪費しない、無駄にしないという意味もある。センターは、その名の通り、建材に地元の木材のほか不用になった扉や窓枠が活用された。
上勝町は長くごみと格闘してきた。戦前までは家具や容器などは木や竹で作ったため、ごみはほとんど出なかったが、戦後になってプラスチックなどの工業製品が普及。1970年代に家庭で処分できなくなったごみを焼くため大規模な野焼きをはじめた。異臭がひどかったため平成10年に町が焼却炉を2基導入。しかし、低温でしか焼けず有毒ガスが出る可能性があったため2年後に閉鎖した。だが、新たな処理場設置の予算もない。そこで町は「ごみ処理」から「リサイクルと減量」にかじを切った。
現在、町は計13種類45分別でごみの再資源化に取り組む。15(2003)年に同町は、2020年までに焼却や埋め立てによるごみ処理をなくす「ゼロ・ウェイスト宣言」を採択。現在のリサイクル率は全国平均の4倍にあたる約81%に及ぶ。リサイクル拠点のセンターを訪れた町に住む女性(73)は「野焼きしていたころの嫌な臭いを今も覚えている。分別は最初、大変だったけど今はなんともない」という。
「ごみを見つめ直すことは自身の生活を見直すこと」。そう話すのはセンターを運営管理している大塚桃奈さん(23)。神奈川県出身で、イギリスなどへの海外留学をきっかけに大量生産・大量消費に疑問を感じ、大学卒業後に上勝町に移り住んだという。
「我慢ばかりでは続かないけれど、ポジティブに楽しく周りを巻き込んでいければ長く続くはずです。もともと目に見える関係性がこの町にはあるし、センターは(町と町以外の人との)コミュニティー形成の場にもなっています」とセンターの役割と仕掛けを話してくれた。
上勝町では毎日、「なぜ作る?なぜ買う?なぜ捨てる?このごみはどこへいく?」とハテナとともに過ごす。その形をした赤い屋根が、上勝町の真ん中にあるのも当然に思えた。(写真報道局 寺口純平)

