ソウルからヨボセヨ

「ケセッキ」と人間並みの「伴侶犬」が併存する面白さ

 韓国で人を罵倒する代表的な悪罵(あくば)は「ケセッキ」だ。語学留学時代にその効果をテストしようと暮夜、屋台のおやじに「ケセッキ!」と言ってみたところ本気で怒って追いかけてきた。「ケ」は犬で「ケセッキ」は直訳すると「犬の子」だが実態は「この野郎」を数倍悪くしたような言葉だ。

 悪口になぜ「犬の子」なのか不思議だ。韓国は犬料理が世界的に有名だから犬にとっていささか肩身が狭かった?のだが、近年、ペット・ブームで犬の存在感が急速に高まっている。そこでペットを「愛玩犬」というのは人間の傲慢さの表れで犬に失礼とばかり、今やマスコミは一斉に「伴侶犬」と称している。

 ところが人権ならぬ「犬権」を尊重しすぎて社会的に飼い主の横暴、放任が目立つと問題になっている。さるタレントの家族が飼っていた犬に有名料理店の女性オーナーがかまれ死亡した事件がきっかけだ。自分の犬ばかりかわいがってご近所など他人への配慮がないというわけだ。

 マスコミは飼い主にエチケットならぬ「ペティケット」の必要性を説いているが、ペットを社会的に「伴侶犬」などと言い換えて甘やかすから秩序がともなわない。伝統的な言語文化の「ケセッキ」と人間並みの「伴侶犬」が併存する韓国は面白い。(黒田勝弘)

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