■学習机販売から出発、自社で加工
国産木材の利用促進を目的に、木材の良さや価値を再発見させる優れた取り組みを表彰する「ウッドデザイン賞」が今年度創設され、県内から家具製造・販売業「キシル」(本社・浜松市中区)が優秀賞に輝いた。戦後に日本各地で造成された人工林が本格的な利用期を迎える中、逆転の発想で林業の6次産業化を進める同社に注目が集まっている。
「ヒノキの机は最初は白っぽい色ですが、使い込むほどに味わいのある濃いあめ色に変化していきます」
国産木材で学習机などの製造・販売を手がけるキシル代表取締役の渥美慎太郎さん(46)は、ヒノキ材を使った机の魅力をそう語る。同社の机は通常のウレタン塗装ではなく、オイル塗装で机を仕上げており、触れると手に吸い付くようなしっとりとした木の質感が最大の特徴だ。
今月10日に発表された「第1回ウッドデザイン賞」(同賞運営事務局主催、林野庁後援)には、全国の大手住宅メーカーなどから822点の応募があった。キシルはソーシャルデザイン部門で「6次産業化プロジェクト」を提案し、「6次産業を川上からではなく、ユーザー目線からたどる逆転の発想」と高い評価を受け、林野庁長官賞(優秀賞)に選ばれた。
農業や水産業の生産者が、自ら農林水産物を食品などに加工し、販売まで手がけるのが一般的な6次産業化だが、同社が提案したのは真逆の流れだった。学習机の販売から出発し、年間5千人以上の安定した顧客を確保することで、木材加工の生産計画がスムーズに立てられ、自社で加工まで手がけるようになったことをアピール。現在は木材生産の現場である山林の購入を目指すなど、いちメーカーの枠にとどまらない発想が評価された。
逆転の発想のきっかけとなったのは「最長で10カ月待ちの時もあった」という家具用の木材の不足だった。国産木材の市場は建材用がメーンで、数年前までは家具の製造に適する長さ2メートルほどの木材はほとんど流通していなかった。渥美さんは全国の木工所や製材所を回って「国産木材の家具は売れる」と口説き、徐々に理解者を増やしていった。
「最初は相手にされなかったが、今では6次産業化が林業の共通言語になった」と話す渥美さん。「生産計画に沿った木の伐採が可能になれば、国内の荒れた山の手入れも進んでいくのでは」とさらなる夢を描いている。



