先端技術支える工業用木炭の「生産拠点」に 中之条から2.2トン初出荷

 リニアモーターカーや電気自動車、ハイブリッドカーなどの先端製品の心臓部は古風な素材、木炭が支えている。還元剤として永久磁石生成に不可欠だからだが、中国が争奪戦に加わった国際市場での入手が困難になり、国産モノに光が差した。合金鉄製造の国内トップ、新日本電工が白羽の矢を立てたのが中之条町の高山林業だ。量産体制やコスト面で課題は残るが、この夏から生産が始まり、今月12日に記念すべき第一陣の2・2トンが出荷された。

 先端技術の粋を集めた心臓部のモーターには最強の永久磁石ネオジム鉄ボロン磁石が使われている。原料となるフェロボロンを国内で唯一生産するのが新日本電工で、同社によると、フェロボロンを生成する上で木炭は不可欠だ。

 「還元剤として炭素が必要なので石炭でも可能ですが、不純物が多く磁力の効果が薄れてしまう」(同社の深澤和生参与・内部統制部長)。還元効率からも木炭が最適という。同社ではこれまで工業用木炭を中国や東南アジアから全量輸入していた。ところが、中国が国内での過剰伐採への反省から輸出を禁じた上、国内需要に促されて輸入国に転じ、東南アジア産の争奪戦に加わってきた。

 ◆間伐材を活用

 どうするか。研究者の勧めもあって、同社は国内産の木炭に目を向けた。資源セキュリティーの面でのメリットはもちろん、国内にはスギを中心に間伐材があふれている。林業関係者によると、スギの自然林で10本のうち6、7本は時間をかけて間引きしないと生育が落ちるという。用途がなく行き場のない間伐材は多い。これを有効活用すれば環境保全にも貢献できる。

 照会を受けた高山林業の高山光男社長は快諾した。

 「炭は1年中、生産できるので、還元剤として先端技術を支える産業ということになれば雇用が生まれ、若者を呼び込むことができる。林業にもプラスだし、地方創生にもつながる」

 中之条町上沢渡で7月下旬に行われた炭窯火入れ式には、高山社長ら同社幹部や同町の伊能正夫町長も出席、東京から駆けつけた深澤参与ら新日本電工幹部らと点火された炎を感慨深げに見つめた。

 高山林業を紹介した酒井秀夫東大大学院教授は「石炭、石油のエネルギー革命の中で木炭は廃れたが、本来、人間の知恵の詰まった素材。還元剤という新しい用途が見つかってなによりだし、間伐材活用は環境保全にも通じる」と語った。

 ただ、ハードルもある。

 まず量産体制をどう構築するか。新日本電工が必要とする工業用木炭は年間2千~3千トン。これに対し、火入れ式が行われた炭窯2基の生産量は年間50トンに過ぎず、80~120基が必要になる。これについて高山社長は長野や山形の同業社に呼びかけ、量産ネットワークを構築する考えだ。

 さらにコスト。輸入木炭に比べ、国産木炭は、まだまだ割高だ。量産体制を広げる中で、どこまでコストダウンをはかれるか。

 ◆ネットワーク構築

 一方でメリットは質の高さ。林業関係者によると、日本の炭は少々高いが海外モノに比べ均等に締まっていて上質。「国名は言えないが、炭に水を入れて重量を増やすようなケースもある」。ネットワークを構築しながら国内に眠る間伐材を有効に使っていけば、質と量と価格の折り合いはつくのではないかという。

 高山林業では中之条町の炭窯2基で木炭を生産、初荷となる2・2トンを12日、富山の新日本電工の工場に向け出荷した。既に完成した4・2トンも順次、送り出す予定だ。新日本電工も生産現場を何度か訪れ、仕上がり具合を確認している。

 「まずはウチで1年かけ生産サイクルを築いて実績を作る。その上でネットワーク構築に動くことになると思う」。高山林業木炭部の井上忠雄担当部長は将来を見据えつつ、足元を固めることを強調している。(久保まりな)

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