世界経済に貿易戦争の足音が迫ってきた。震源地は、米大統領選の共和党候補、トランプ氏が「知的財産のあきれた窃盗行為」「史上最も巧みな為替操作者」と、その不公正な行動を糾弾する中国だ。
世界貿易機関(WTO)が主要20カ国・地域(G20)の貿易政策を調べた最新の報告書によると、5月半ばまでの7カ月間に、市場の需給を無視した安値輸出などの攻勢に対し、関税の引き上げなどの新たな保護貿易措置をとった件数は、WTOが監視を始めた2009年以降で最多の145件に急増しているという。このうち89件は反ダンピング(不当廉売)関税や相殺関税と呼ばれる報復的な防衛措置だ。
WTOの調査が示す通商摩擦の拡散の背景に、世界経済の停滞と、鉄鋼をはじめとする過剰生産など中国経済の構造問題があることは今さら言うまでもない。問題はこれが沈静化していくのか、貿易戦争にまで延焼してしまうかだが、情勢は悪化に向かっている。渦中の中国が、火に油を注ぐ脅しの通商カードを切り始めたからだ。中国政府が先月決めた、欧州連合(EU)、日本、韓国の方向性電磁鋼板を対象に今後5年間、37.3~46.3%の反ダンピング関税を課すとした措置のことだ。