七回忌に「問う安楽死」 免疫学者・多田富雄氏の未上演作「生死の川-高瀬舟考」

「生死の川」でシテを勤める浅見真州(手前) =東京都港区の銕仙会能楽研修所

 著名な免疫学者で、脳死を主題にした「無明(むみょう)の井」など能作者や詩人としても活躍した多田富雄氏(1934~2010年)。七回忌に当たる21日午後6時半から、未上演作だった「生死(しょうじ)の川-高瀬舟考」が国立能楽堂(東京都渋谷区)で初演される。

 安楽死をテーマにした、森鴎外(1862~1922年)の小説に取材した作品。鴎外の原作では弟をあやめた兄の物語だが、この作品では夫婦に置き換えられ、乳がんの苦しみに耐えかね、自殺を図る妻の願いを受け入れ、その死を幇助(ほうじょ)した夫を描く。夫の亡霊(浅見真州(まさくに))が高瀬舟に乗り込み、船頭(宝生欣哉(ほうしょうきんや))に自らの罪のありかを問いかけ、安楽死の是非を投げ掛ける。

 約20年前に書き下ろされ、今回の初演のため、シテ(主役)を勤める観世流能楽師、浅見真州(74)が節を付けた。浅見は「高齢化社会の現代にあって、社会的なテーマを含んだ作品。(安楽死という)テーマを鋭く表現し、供養にしたい」と話している。

 多田氏の妻で、医師の式江さんは同作の申し合わせ(リハーサル)を見て、「老老介護が現実にある現在、こんなに訴えかける能になるとは思わなかった」と感無量の様子だった。

 問い合わせはアトリエ花習(電)090・9676・3798。(飯塚友子)

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