文氏自賛、バイデン氏との会談を「期待以上」 対北打開策は見えず
【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が22日(米東部時間)、19日からの訪米日程を終えて帰国の途に就いた。バイデン米大統領との21日の首脳会談では、北朝鮮の核問題の外交的解決や新型コロナウイルスのワクチン生産での協力方針を確認。文氏は「結果は期待以上」と自賛しつつも、文氏が切望する北朝鮮との対話再開に向けた具体策は打ち出せなかった。
文氏は22日、交流サイト(SNS)に「最高の会談だった。最初のノーマスク会談で一層気分が良かった」と投稿した。バイデン氏が申し出た韓国軍兵士ら55万人分のワクチン提供について、「まさにサプライズプレゼントだった」と強調。「韓国をなぜ優先させるのか」との米政府内の反対を押し切っての決定だったとして、「韓米同盟の重要性を特別に重視してくれた」と振り返った。
また、米側から北朝鮮担当特使に北朝鮮問題のエキスパートである韓国系のソン・キム氏を充てる人事を発表直前に知らされたと明かした。バイデン政権は北朝鮮の人権問題を担当する高官を先に任命するとみられていただけに、文氏は「対北非核化交渉を優先する姿勢を示し、北朝鮮に対話の準備ができているとのメッセージを送った」と解釈してみせた。
だが、当の北朝鮮は対話に応じる姿勢を示しておらず、会談では、北朝鮮を交渉に引き出すための具体策も明らかにされなかった。
文氏は22日、韓国製薬大手と米モデルナ社によるワクチンの委託生産契約の覚書締結にも立ち会い、「全世界的なワクチン供給不足を解消し、人類の日常への回復を早めてくれるだろう」と期待を語った。
ただ、韓国内に即座にワクチンが供給されるわけではなく、ワクチン接種の遅れに対する国内の批判はくすぶり続けそうだ。