イスラエルとハマス、双方の目的一定達成で停戦 定着は見通せず
イスラエルのネタニヤフ政権とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが停戦を決めたのは、11日間の軍事衝突でそれぞれの目的を一定程度達成したためだ。停戦調停に影響力を発揮したエジプトだけでなく、バイデン米政権が慎重に関係諸国への働きかけを行ったことも奏功した。ただ、イスラエルとハマスの対立構図にまったく変化はなく、停戦が定着するかは見通せない。(カイロ 佐藤貴生、ワシントン 大内清)
ネタニヤフ首相はバイデン大統領と衝突が始まって以降、「6回」(バイデン氏)の電話を重ねた。バイデン政権は露骨に停戦を求めることを避けつつ、エジプトなど関係諸国への「電話外交」で停戦への働きかけを進め、静かにネタニヤフ氏への圧力を強めた。
イスラエルにとり米国は年間38億ドル(約4100億円)の軍事支援を受ける最大の同盟国。ネタニヤフ氏としては蜜月関係にあったトランプ前政権期より距離ができたとはいえ、バイデン政権との関係悪化は望ましいことではなかった。
両国にはさらに、良好な関係を必要とする事情もあった。バイデン政権が復帰を目指すイラン核合意の問題だ。イランを敵視し、核合意に反発するネタニヤフ氏はバイデン政権のイラン政策に影響力を行使するため、バイデン政権はこの問題でイスラエルから理解を得るため、互いの顔に泥を塗るわけにいかなかった。
イスラエル国内の政局がネタニヤフ氏有利に転じたことも、同氏が停戦を決断した一因とみられる。
同国内では3月の総選挙後、ネタニヤフ氏が組閣に失敗したのを受け、「反ネタニヤフ」政権の樹立を図る動きがあった。だが、ハマスとの戦闘激化に伴い、イスラエルではネタニヤフ氏に対するユダヤ人右派の支持が拡大。中道・左派勢力との連携も取り沙汰された極右政党が同氏との共闘にかじを切った。ハマスとの戦闘は、収賄疑惑などを抱える同氏の求心力回復にもつながった。