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「対中で結束」発信 日米仏共同訓練

 15日に公開された陸上自衛隊とフランス陸軍、米海兵隊の共同訓練は東・南シナ海で高圧的な海洋進出を強める中国に対し、自由や民主主義の価値観を共有する3カ国の結束を示すものだ。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺などでの中国の威圧と挑発を牽制(けんせい)するメッセージを発信した意義は大きい。

 「太平洋国家として日米と認識を共有する」(仏陸軍のマルカイユ中佐)

 「フランスが参加し、良い機会となった。戦術技能の共有は重要だ」(米海兵隊のネルソン中佐)。

 米仏の指揮官らが背景と意義で「共有」を強調した今回の共同訓練の準備が始まったのは1年近く前だ。

 「米軍も交えた訓練をやろう」。昨年7月、自衛隊の山崎幸二統合幕僚長と仏軍のフランソワ・ルコワントル統合参謀総長がテレビ会談を行い、共同訓練を実施する方針で一致した。

 日米仏で調整を始め、訓練内容を離島防衛にすることは即座に固まった。当初は九州の無人島で行うことを想定した。尖閣奪取を狙う中国に「手を出させない」という牽制のメッセージを発するには尖閣と同じ無人島で訓練を実施することが効果的だからだ。太平洋に海外領土を有し、インド太平洋国家を自認するフランスも「航行の自由や国際法順守の重要性をメッセージとして伝える」(仏軍幹部)ため、無人島での訓練計画を歓迎した。

 ただ、仏軍艦艇は陸上自衛隊相浦(あいのうら)駐屯地(長崎県)に近い佐世保港(同)に寄港。宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島演習場には市街地戦闘訓練施設があり、射撃訓練も行える。それらを踏まえ、無人島ではなく、相浦と霧島の2カ所での訓練実施を決めた。

 実際に離島を使う訓練に比べてインパクトは弱まったが、作戦運用上の能力向上は期待できる。自衛隊幹部は「仏軍はテロ対処などで市街地での作戦の経験が豊富だ」と指摘。中国による先島諸島侵攻では市街地戦も想定され、陸自は作戦のノウハウなどで仏軍から習得すべきことは多い。

 元統合幕僚副長で、昨年8月まで九州・沖縄を管轄する西部方面隊トップの総監を務めた本松敬史元陸将は訓練の意義をこう説明する。「日米仏の結束力を内外に示し、インド太平洋地域の平和と安定を主導するという戦略メッセージを、南西諸島防衛を担任する西部方面隊管区から発信できる。それにより対中牽制という効果をもたらす絶好の機会だ」

 メッセージの発信は中国が重視している世論戦の機先も制する。世論戦は軍事行動への国際社会の支持を得たり、国際世論に影響を与えたりすることが目的だ。日米仏は中国の世論戦を封じ込めるように、訓練を通じてルールに基づく海洋秩序を維持する姿勢を国際世論に暗に訴えた。

 欧州からはフランスに続き、英国が空母クイーン・エリザベスを中心とする空母打撃群を年内に初めて日本に寄港させる。ドイツもフリゲート艦の派遣を表明した。今回の日米仏訓練の一部にはオーストラリア海軍も参加している。

 英独の艦艇派遣に合わせた共同訓練で、日米豪にインドも加わればQUAD(クアッド=英語で4の意味)プラスが対中牽制で形成される。(半沢尚久)

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