米景気、予想外の低調「山あり谷あり」 4月の雇用統計
【ワシントン=塩原永久】米経済の先行きを占う7日発表の4月の雇用統計は、大幅な回復を見込んだ投資家の期待を裏切る低調な改善にとどまった。新型コロナウイルス危機の傷痕は深く、今後も「山あり谷あり」(イエレン米財務長官)という景気の現状が浮き彫りになった。バイデン大統領は「道のりは長い」と指摘し、巨額経済対策の必要性を強調している。
米労働省が発表した4月の雇用統計で、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数は26万6千人増だった。前月の77万人増から改善の勢いが鈍化。ワクチン普及などに伴う経済再開を受け、100万人近い増加を見込んでいた市場予想を大きく下回った。
バイデン氏は7日、経済復調に向けて「正しい道を進んでいる」と語り、防戦に回った。インフラ整備など総額4兆ドル(約430兆円)規模となる成長戦略の法案を成立させ、中間層や低所得層を支援する姿勢を重ねて強調した。
一方、雇用増が期待外れに終わった背景に、失業給付の上乗せ措置が就労意欲を失わせていることがあるとの指摘が出ている。「失業給付頼み」となった労働者が求職活動を再開しようとせず、復職者が増えないことが、雇用改善の足を引っ張っているとの見方だ。
野党・共和党は「政府が(労働者を)仕事に戻らないよう仕向けている」(ルビオ上院議員)と批判。経済界も「失業給付の上乗せを終えるべきだ」(米商業会議所)と主張している。手厚い労働者保護を掲げ、「大きな政府」の傾向を鮮明にするバイデン政権の経済運営のあり方が、与野党間の大きな争点に浮上する気配が強まっている。