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トルコ、DV条約脱退で女性反発

トルコ国内のドメスティックバイオレンスの実情を語るアテシジ弁護士=イスタンブールの事務所(佐藤貴生撮影)
トルコ国内のドメスティックバイオレンスの実情を語るアテシジ弁護士=イスタンブールの事務所(佐藤貴生撮影)

 【イスタンブール=佐藤貴生】トルコのエルドアン政権が欧州評議会の「女性への暴力およびドメスティックバイオレンス(DV)防止条約」からの脱退を決め、国内外から非難の声があがっている。人権団体によると、男性優位の風潮が強いトルコでは夫による妻への暴力や殺害が他国より多いとされ、脱退でこの傾向が助長される懸念があるからだ。一方で、イスラム教の価値観を重視する信徒の多くは、「(条約は)同性愛を容認し、家族の構造を崩壊させる」と決定を歓迎しているという。

 ロイター通信によると、脱退は20日に官報で発表された。決定を受け、欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は「女性の保護や基本的権利を危機にさらすリスク」があると指摘。バイデン米大統領も「強い失望」を表明した。

 条約は2011年に欧州評議会で採択された。トルコは最も早く署名した国の一つで、イスタンブール条約とも呼ばれる。そのイスタンブールでは27日、「犯人ではなく女性を守れ」といったプラカードを掲げた女性数千人が政権の決定に抗議するデモを行った。

 イスラム色が濃いエルドアン大統領の与党「公正発展党」(AKP)は、男女同権をうたい、性差別を禁じた条約はイスラム教に基づく家族の伝統的な価値観を損なうと主張。政権は、女性の権利は国内法で守られると反論している。

 トルコの人権保護団体によると、同国では昨年、女性が殺害された事件は300件もあった。自殺として処理されたものの殺人が疑われる事件が他に170件あるという。今年も疑い例を含め、2月末までに女性が殺害された事件は77件を数えた。

 DVに詳しいイスタンブールの女性弁護士、カルデラン・アテシジさん(27)は、「条約は(イスラム的な)家族の価値観を傷つけるものではない」と政権の決定を批判。

 また、夫の暴力は妻が離婚を切り出したときに起きることが多いとし、「経済的な自立を目指す女性が増えているのに対し、夫は妻を所有物だとみなして怒る傾向がある。新型コロナウイルスの感染拡大による失業増だけでは説明できない」と分析した。交際相手や元夫、知り合いの男性らによる女性殺人も少なくないという。

 エルドアン大統領は条約署名当時の首相。政策転換の背景に、支持基盤であるイスラム保守層の歓心を買うため、欧米諸国への対抗姿勢を強調する狙いがあるとも指摘されている。

 トルコは1923年、政教分離を国是として独立したが、エルドアン氏はイスラム保守層を重視する政策を打ち出し、長期にわたり国のトップの座を占めている。

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