シリア内戦10年で約40万人死亡 独裁者が「強制失踪」で恐怖支配

シリア内戦は15日、10年の節目を迎えた。中東・北アフリカで長期独裁政権を倒した2011年の「アラブの春」はシリアにも波及し、反政府デモが発生した。同国のアサド独裁政権はデモ参加者を徹底弾圧し、今に至る内戦へと発展。この10年で約40万人が死亡し、1000万人以上の避難民を生んだがアサド大統領の圧政は終わらず、現在は住民を不法に拘束して連れ去る「強制失踪」が国際社会の非難の的となっている。(カイロ 佐藤貴生)
中東を不安定化
アラブの春で広がった反政府デモは11年1月にチュニジアのベンアリ政権、2月にエジプトのムバラク政権を倒し、シリアでも同年3月15日を機に首都ダマスカスなどで本格化した。
アサド政権の徹底弾圧で、デモは政権打倒を狙う武装闘争に発展し、政府軍の離脱兵らが結成した「シリア自由軍」や国際テロ組織アルカーイダ系の「ヌスラ戦線」が台頭。アサド氏はロシアやイランの支援を得て封じ込めた。化学兵器の使用疑惑がたびたび浮上して欧米諸国は政権の排除を訴えたが、アサド氏は権力を手放さなかった。
内戦による統治の空白はイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が台頭する素地を作った。
ISは14年、シリア北部ラッカを「首都」とする政教一致の疑似国家創設を宣言。反体制派が北部の主要都市アレッポを制圧するなど勢いを増したのと相まって、アサド政権の支配地域は国土の2割まで減った。だが、15年にロシアが軍事介入して政権側を支援したことで支配地域は3分の2まで挽回したとされる。