【ソウルからヨボセヨ】2度目の「新年」
旧正月といわれる陰暦の1月1日は今年は2月12日で、韓国や中国、台湾など東アジア一帯はこのところ連休中だ。中国では「春節」で韓国では「クジョン(旧正)」とか「ソル」という。韓国では1960~70年代の朴正煕(パク・チョンヒ)時代、近代化推進策で旧正の廃止、陽暦への一本化が進められたが、80年代に全斗煥(チョン・ドゥファン)政権下で復活し公休日になった。
朴政権時代は経済建設に総力を挙げていたので、正月休みを2度もやるのはおかしいといい、年越しを2回やることを意味する「二重過歳」といっていつも非難していた。しかし、実際はほとんどの国民が旧正月の方をより楽しんでいて、企業は連休にしたうえで帰省バスを仕立て、従業員を故郷に送っていた。
旧正の行事は家族のだんらんと先祖への拝礼で、そのために帰省が伴うことになるが、今年は新型コロナ禍で政府が人びとの移動と3密を厳しく規制しているのでいささか寂しい旧正風景だ。ただ近年は家族主義も後退気味でこの際、親元に行かなくて済むという横着者も増えているようだ。
それにしても今週、スマホで年賀状など「新年おめでとう」というメッセージを何通かもらった。2度目の新年のあいさつだから落ち着かない。「二重過歳」の言葉をあらためて思い出している。(黒田勝弘)