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核兵器禁止条約発効 「安保環境の現実を踏まえよ」 秋山信将・一橋大教授

一橋大教授 秋山信将氏
一橋大教授 秋山信将氏

 核兵器禁止条約の発効は、罪のない市民も殺しかねない核兵器の使用に反対する機運を高めるだろう。だが、条約には核保有国が入っておらず、全面禁止に向けた国際慣習法となるには不十分だ。

 「核兵器のない世界」という理念は、唯一の戦争被爆国の日本やバイデン米政権も共有している。理念は同じだからと日本政府に条約参加を求める人たちがいるが、核なき世界を実現するには安全保障環境の現実を踏まえた道筋が必要だ。

 日本周辺では中国が核兵器を質・量ともに増強し、北朝鮮は核の先制使用を排除していない。ロシアもいる。こうした脅威への対処で、日本は米国の核の拡大抑止(核の傘)に期待せざるを得ず、参加は困難だ。

 脅威を核で抑止することも条約が禁じる「威嚇」に当たり、米国が日本防衛に核を使用できなくなるからだ。核の選択肢なしに日本を守ることを、米国は現実的とは考えないだろう。

 バイデン政権では、トランプ前政権で進んだ核兵器の近代化や国防予算の増額が止まる可能性がある。核ドクトリンや小型核、非戦略核を含む核態勢の見直しがあるかもしれない。

 期限切れが迫る米露の新戦略兵器削減条約(新START)は延長論が優勢のようだ。延長後は後継条約や、中国その他の核保有国を軍備管理の枠組みに入れていく方策などが焦点となる。だが、議論は容易には進まないだろう。

 日本は米国とどう連携すれば安全を確保できるのか、緊密に協議していく必要がある。日米の連携が中国や北朝鮮に対する抑止となり、同時に中国との戦略対話を模索していくことが、アジアで核兵器の役割を減らしていくステップになる。核兵器禁止条約に入るため米国の核の傘から抜けるべきだとの議論よりも、核の傘が必要な安全保障環境をどう改善するかという考え方が必要だ。

 条約の策定過程で、核なき世界の理想を掲げる国と安全保障上の現実を抱える核保有国などの間に分断が生じた。日本が双方の事情や懸念を知り合う非公式対話の場を設け、議論の土台を築く努力も大切だ。(聞き手 平田雄介)

     ◇

 あきやま・のぶまさ 一橋大大学院教授。博士(法学)。広島市立大広島平和研究所講師、日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員を経て、2016年4月~18年3月、在ウィーン国際機関日本政府代表部公使参事官。同4月から現職。

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