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【世界の論点】米中報道の違いに見る「宇宙開発新時代」

米スペースXの新型宇宙船クルードラゴンで国際宇宙ステーションに到着し、出迎えた飛行士と抱き合って喜ぶ野口聡一さん(中央)=11月17日(NASAテレビから・共同)
米スペースXの新型宇宙船クルードラゴンで国際宇宙ステーションに到着し、出迎えた飛行士と抱き合って喜ぶ野口聡一さん(中央)=11月17日(NASAテレビから・共同)
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 米中の宇宙開発が新たな段階に突入している。米国では初めて運用段階に入る民間企業開発の有人宇宙船が、国際宇宙ステーションに到着。民間人の旅行など、宇宙の商業利用が本格化する時代の始まりを告げた。中国は米国・旧ソ連に続き、44年ぶりに月面の土壌の持ち帰りに成功。あらゆる分野で米国との覇権争いが激化するなか、人民解放軍の主導による開発強化で「宇宙強国」入りを急いでいる。

≪ポイント≫

 ・米、民間委託で輸送コストを4割削減

 ・「未知リスクへの対処に限界」批判も

 ・月面の土壌回収、中国が44年ぶり成功

 ・対米覇権争い「発展途上大国の宿命」

米国 民間委託で歴史の転換点に

 米企業スペースXが11月中旬、野口聡一さんら日米の飛行士4人を乗せた宇宙船クルードラゴンを打ち上げ、国際宇宙ステーションへのドッキングを成功させた。米航空宇宙局(NASA)が民間企業に有人輸送を委託した今回の事業について、「大きな政府に批判的な人々にとって大変な偉業だ」(米紙ウォールストリート・ジャーナルのコラムニスト、ケスラー氏)と評価されている。

 これまで巨額の資金を要する宇宙開発は国が中核となって進められてきた。1969年に人類初の月面着陸を実現した米国でもNASAが事業の中心にある。ところが今回は、米電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が立ち上げたスペースXが主体となって、宇宙船の開発やロケットの打ち上げを行った。

 NASAでは2度の事故で14人の宇宙飛行士を失いながらも30年間世界の宇宙開発をリードしてきたスペースシャトルが、2011年に退役。自前で宇宙飛行士を送り出す手段を失い、ロシアに有人輸送を委託してきた。米紙によると、スペースXの利用により、NASAは宇宙飛行士1人当たりのコストを約4割削減できるという。国の資金や組織をフル活用した「大きな政府」が主役を担った事業の一部が民間に委ねられ、宇宙開発史の転換点を指し示したといえる。

 テスラは巨大IT企業がひしめく米西部カリフォルニア州シリコンバレーに本拠地を置いている。イノベーション(技術革新)と経営スピードを重視して成功した米国企業の代表例だ。

 民間に宇宙開発事業を任せていく動きについて、南部テキサス州のブラウンズビル・ヘラルド紙は社説で、「企業間の競争が急速な技術革新と質の向上をもたらし、コストは急落する」と主張。「民間プロジェクトこそ最善だ」と強調する。

 米外交問題評議会(CFR)によると、米国家予算の歳出先にNASAが占める割合は、米ソが宇宙開発を競った1966年に4・5%とピークに達した後は減少し、近年は0・5%前後で推移している。限られた予算の中で民間委託を活用すれば、NASAは火星探査などの野心的な計画に資金を割り当てられる。

 一方、こうした民間委託には批判もある。天文学者のニール・ドグラース・タイソン氏は「民間企業は定期的な宇宙輸送は運用できるが、未開領域の探索に伴う未知のリスクに対処することはできない」と指摘し、事業委託の拡大には限界があるとの認識を示している。

(ワシントン 塩原永久)

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