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チャーチルの影 「主権」譲らぬジョンソン英首相

ジョンソン英首相=19日、ロンドン(ロイター)
ジョンソン英首相=19日、ロンドン(ロイター)

 【ロンドン=板東和正】英国と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)交渉で、合意に向けた最大の障害が「英周辺海域での漁業権」だ。漁業権は英国がEU離脱によって回復を目指す「主権」にかかわる問題。ジョンソン英首相は海域の管理強化に執念を燃やしており、従来通りの操業を長期間続けたいEUと対立を続けている。

 EUの共通漁業政策の下では、加盟国は割り当てられた漁獲上限を守れば、他国の排他的経済水域(EEZ)でも漁ができる。だが、英EUが従来の経済関係を保つ「移行期間」が今年末に終了すれば、英国のEEZはEUから切り離される。

 このため、英国はFTAで、移行期間終了後、EUと毎年交渉して英周辺海域での漁獲割当量を決める考えを主張した。EU加盟国の漁獲量を段階的に減らし、海域の管理を強化する狙いがあった。

 EUは当初、従来通りの操業を永久に続ける方針を訴えていたが、最近になり、数年間現状を据え置いた後で交渉に応じるとの妥協案を示した。それでも、英国側は首を縦に振らず、速やかな交渉を要求した。

 ジョンソン氏が妥協しないのは、漁業権を「主権奪還」の象徴と位置付けているからだ。

 漁業は英経済の0・1%程度しか占めないが、EU離脱を支持する英国民は英周辺海域で他国船が操業することに不満を募らせていた。離脱を主導したジョンソン氏は、海域の自国管理を強化することで、EUから主権を取り戻したことを証明したい考えとみられる。

 ジョンソン氏は第2次大戦でドイツに徹底抗戦し、英国への侵攻を防いだチャーチル元首相に傾倒しているとされる。英与党・保守党の元議員は「ジョンソン氏はチャーチルの影響から、国家の主権のために立ち上がる行為に心酔している」とした上で「漁業権の問題では、ジョンソン氏の主権へのこだわりが如実に現れた」と分析する。

 ジョンソン氏は17日、数年間現状を据え置くことを求めるEUに対し「英国が長期にわたって自国の水域を管理できず、主権国家としてあり得ない状況になることは受け入れられない」と主張した。

 交渉を軟化しない背景には、ジョンソン政権の支持率が低迷している事情もある。英国は新型コロナウイルスの死者数が欧州で2番目に多く、医療体制の整備が遅れたジョンソン政権の対応に批判が集中。英調査会社ユーガブによると、4月時点は60%台だった支持率が11月下旬には30%台に落ち込んだ。ジョンソン氏が漁業権をめぐる協議で妥協し、最大の支持者であるEU離脱派を失望させれば、さらなる支持率低迷につながりかねない。

 一方、EU側が英周辺海域で操業にこだわるのは、フランスやオランダなどの漁業関係者の事業継続に欠かせないためだ。英国の近海にはサバ、タラなどがとれる豊かな漁場があり、EU加盟国の北大西洋全体での漁獲量の35%を英海域が占めているとされる。EUのフォンデアライエン欧州委員長は「EUの漁業者の安定性を求めている」と呼びかけ、英国側の譲歩を迫った。

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