イラン核科学者暗殺、イスラエル製武器使用か モサド関与も主張
【カイロ=佐藤貴生】イランの首都テヘラン東方で「核開発の父」と称される核科学者ファクリザデ氏が暗殺された事件で、イランの国営英語衛星放送局プレスTVは30日、匿名の当局者の話として、暗殺現場から採取された武器にイスラエル軍需産業が製造したことを示す「ロゴと特徴」があったと伝えた。
また、イラン最高安全保障委員会のシャムハニ事務局長は同日、暗殺にはイランの反体制非合法組織「国民抵抗評議会」が関与し、イスラエルの対外情報機関モサドと協力して行ったとの見方を示した。同氏は暗殺は「電子機器による遠隔操作」を使った複雑なものだったとも述べた。イランのメディアは自動小銃が遠隔操作され、人工衛星と連動した兵器もあったと報じている。
イラン指導部は暗殺を受けてイスラエルへの報復を明言しており、イランの保守系紙ケイハンはイスラエルの関与が確認された場合、同国北部の港湾都市ハイファに攻撃を行うべきだと主張した。
同紙は最高指導者ハメネイ師に近く、反米の保守強硬派の意見を反映しているとされるが、米次期大統領に就任する見通しとなったバイデン前副大統領はイランとの対話を模索しており、米国との関係が深いイスラエルへの大規模な報復は控えるとの観測もある。
また、イスラエルのコーヘン情報相は30日、暗殺の犯行組織は不明だとした上で、イランの報復に備えて警戒していると明かした。
イラク外相は29日、イラン外相との電話会談でファクリザデ氏への弔意を伝え、暗殺は地域の安定を損なうと非難。イスラエルと国交正常化で合意したアラブ首長国連邦(UAE)も暗殺を批判し、関係国・組織に自制するよう呼びかけるなど、中東では緊張激化を懸念する声が出ている。
ファクリザデ氏の遺体は30日、テヘラン北部の墓地に運ばれた。ハタミ国防軍需相は葬儀で「犯罪を決して野放しにはしない」と述べ、報復すると強調した。ファクリザデ氏は国防軍需省の開発部門トップを務める高官だったとされる。