「ジェンダーの平等」を平和構築の中核に 中満国連事務次長ら寄稿

国連安全保障理事会で2000年10月31日に女性と平和・安全に関する初の決議が採択されて20年を迎えたのを受け、国連の中満泉事務次長・軍縮担当上級代表とセルマ・アシパラ=ムサヴィ軍縮問題諮問委員会委員長が連名で産経ニュースに寄稿した。
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新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)で、私たちはみな困難と不透明さに直面している。暴力-ときとしてそれは家のすぐ外で起きる武力衝突の猛威によるもの、あるときは家庭内の暴力-と闘う人々にとって、不安と苦しみが日々一刻一刻を覆いつくしているだろう。
今年前半、(各国で)外出禁止令が出た際、多くの世界中の女性や少女は突然、虐待者とともに周囲の視界から隔離されてしまった。時には銃口を突きつけられて。それから間もなく、国連事務総長は「家庭内暴力の恐るべき世界的急増」の兆しを報告した。
パンデミックが収束しても、こうした女性たち、特に武力紛争や暴力で荒廃した社会に住む女性たちに安心はほとんどもたらされないかもしれない。その状況が放置されれば、暴力の波はこうした女性たちに絶え間なく襲い掛かるだろう。
すべての女性は、武器を用いた暴力を終わらせることに、等しく限りない利害を持っている。世界は彼女たちに、家庭や地域、世界各地で、それに対抗する可能な限りの手段を与えなければならない。私たちの生命を脅かしている恐ろしいウイルスは、この課題の解決をさらに喫緊なものにしている。
20年前、安保理は平和と安全の促進における女性の重要な役割を認め、再確認した複数の決議の嚆矢(こうし)である決議1325を採択した。こんにち、私たちはこれまで以上にジェンダー間で、紛争や暴力の、特に武器が伴う経験がいかに異なるかを理解している。和平の仲介や平和構築、紛争および暴力を予防する努力で、女性たちが声を封じられ、構造的に排除される要因についても、よりよく理解している。
だが、安保理がこの問題に関する最初の決議を採択してから20年後の今も、根本的なジェンダーの不平等は私たちの生活の至る所に残っている。
効果的な軍備管理と軍縮の欠如は平和とジェンダーの正義を実現する障害の一つだ。小型武器の拡散は、紛争地の内外で性的暴力やジェンダーに根差す暴力を容易にした。本来なら男女両方に資する社会・経済的な機会向上に振り向けられる公的資金に占める軍事費の割合は増えており、国家間の軍備競争も増している。拳銃から核爆弾に至るまで武器は、ジェンダーの不平等を容易にする社会規範や根本的な原因、力関係を助長する。