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【森浩のアジアの視線】米中対立は憂鬱でしかないASEAN

 「率直に言えば、東南アジアにとって米中対立は憂鬱でしかない」

 昨年の東アジアサミット(EAS)取材でタイを訪れた際、東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局の1人がこうつぶやいたことを覚えている。米中双方に対する距離の取り方の難しさを吐露した形だ。首脳も同様の意見で、シンガポールのリー・シェンロン首相は「米国か、中国かの選択を強いられたくない」と繰り返し述べている。

 憂鬱の根源は、経済と外交のジレンマだ。ASEAN加盟国は地理的に近い中国と経済的な結びつきが強い。関係は年々緊密化し、中国が発表した今年上半期の国・地域別貿易統計によると、ASEANとの貿易額は欧州連合(EU)を抜いて初めて首位となった。

 一方、新型コロナウイルス流行下でも南シナ海で覇権主義を隠そうとしない中国には、ベトナムやフィリピンを中心に警戒が強まっている。対中牽制(けんせい)のために米国の関与を求める声は強く、中国が軍事拠点化した人工島の周辺で米国が艦船を航行させる「航行の自由作戦」には支持も集まる。

 ASEAN全体としては地域の繁栄と安定のため、米中両にらみの戦略を採用せざるを得ない状況だ。加盟10カ国は2018年、南シナ海での摩擦はいったん脇に置き、中国と初の合同軍事演習を実施し、19年には米国とも演習を行った。「米中両国と関係を保ち、ヘッジング(危険回避)することが重要だ」とのASEAN事務局関係者の言葉は、偽らざる本音だろう。

 中国が打つ「くさび」はASEAN内部に亀裂を広げてもいる。ラオスとカンボジアは中国から巨大経済圏構想「一帯一路」による巨額支援を受け、中国傾斜が進む。両国は近年、ASEAN関連会合で共同宣言を取りまとめる際、南シナ海問題で対中批判のトーンを弱める動きに出ている。

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