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【パリの窓】プーチン氏と東独

ロシアのプーチン大統領(AP)
ロシアのプーチン大統領(AP)

 ロシアのプーチン大統領は37歳まで5年間、旧東ドイツのドレスデンにソ連の工作員として駐在した。次女が生まれ、家族4人で穏やかな日々を送ったらしい。地元のビールが好きだったという。

 当時の職場だったKGB(旧ソ連国家保安委員会)の支局を訪ねると、エルベ川を望む丘の一軒家だった。道の向かいにKGBと連携していた東独秘密警察のビルがある。鉄格子の地下壕(ごう)からは、今も拷問の叫び声が聞こえてきそうだ。

 1989年、ベルリンの壁崩壊後、怒った群衆がKGBの支局にも押し寄せた。モスクワから指示はなく、プーチン氏は秘密文書を焼きまくったという。祖国の脆(もろ)さを悟っただけではない。敵に一度譲歩したら、やがて奔流となり、自分を押しつぶすのだと心に刻んだことだろう。

 2006年、プーチン氏は大統領として訪独し、ドレスデンに立ち寄った。川岸から丘を眺め、小さなパン店に入った。その店に行ってみると、店員が「予告なしに来て、店主は驚いたそうです」と言い、写真を見せてくれた。当時、露政府は「大統領は店で地元客と歓談した」と広報したが、写真は少し違った。地元の男たちがおしゃべりに熱中し、背後でプーチン氏が一人静かにお茶を飲んでいる。存在感を消す特技。まさに、スパイそのものだった。(三井美奈)

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