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【世界の論点】露の反体制派指導者 毒殺未遂 欧州で対露制裁論が浮上

8月22日、ドイツへの移送のため救急車で露オムスクの空港に搬送されるナワリヌイ氏(中央)=ロイター
8月22日、ドイツへの移送のため救急車で露オムスクの空港に搬送されるナワリヌイ氏(中央)=ロイター

 ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏が8月20日、国内線の旅客機内で倒れ、重体となった。移送先のドイツでの検査と分析で旧ソ連が開発した神経剤「ノビチョク」系の物質が使われたと判明。欧米を中心に露プーチン政権への批判が高まっている。ロシア国内では事件の真相をめぐりさまざまな臆測が飛び交うが、プーチン政権への打撃は深刻だとの見方が強い。一方、欧州諸国では対露制裁論が浮上、メルケル独首相も厳しい立場を示した。ただ、ロシアに天然ガスを依存する欧州には、経済制裁に安易に踏み切れない事情もある。

ロシア 「欧米と悪化」政権に打撃

 ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏が一時意識不明となった事件で、プーチン政権側の関与を疑う声が国際的に強まる中、露メディアでは「誰が、何のためにやったのか」とミステリー小説さながらの推理合戦が繰り広げられている。ただ、仮に真相が明らかにならなかったとしても、ロシアの国際的地位の低下や欧米との関係悪化、国内の反政権機運の強まりなど、政権への打撃は深刻だとする分析が支配的だ。

 ナワリヌイ氏はノビチョク系の毒物で襲撃された-との見解をドイツ政府が公表し、国際社会から真相解明を求める声が高まる中でも、プーチン政権は「欧米の反露キャンペーンだ」と反発。政権側の関与を強く否定する一方、捜査には消極的な姿勢を示している。

 こうした中、露メディアからは事件について多くの仮説が出ている。(1)政権中枢の意思で襲撃が行われた(2)何らかの見返りを期待する治安機関や軍の一部が独自に実行した(3)ナワリヌイ氏が不正を追及していた地方政府高官が指示した(4)ロシアの地位低下を図った第三国が計画した(5)ナワリヌイ氏の自作自演-などだ。ロシアは自国をめぐって過去に浮上してきたさまざまな疑惑と同様、うやむやにして問題の幕引きを図る思惑とみられる。ただ、仮に真相が明らかにならなかった場合でも、ロシアが受けるダメージは大きい。

 10日付の露経済紙コメルサントは「世界中がナワリヌイに飛びついた」と題した記事で、事件がロシアに及ぼす影響を分析した。

 記事は「近年の米国と欧州は対ロシア政策で温度差が目立っていたが、ナワリヌイ氏が再び両者を結び付けた」と指摘。具体例として、8日に先進7カ国(G7)の外相がロシアを「一致して最も強い言葉で非難する」と共同声明を出したり、ロシアと欧米側の高官の会談などが相次いで延期されたりしていることを挙げた。

 さらに記事は「事件は2014年のクリミア併合に匹敵するほどロシアと欧米の関係を悪化させる」とする専門家の見方を紹介。「ロシアの天然ガスを欧州に輸出する現在建設中のパイプライン『ノルドストリーム2』の将来が危うくなった」とする別の専門家の見解も伝えている。

 露経済紙ベドモスチも7日付の社説で「事件に政権が関与したかは不明だが、いずれにせよ国民はナワリヌイ氏を英雄視する一方、政権は恐ろしい権力組織だとの印象を強める」と指摘。その上で、「国家と国民の断絶が深まる」と分析した。(モスクワ 小野田雄一)

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