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「リンゴ」の危機は座視できない 香港の報道・言論の自由「最後の砦」

保釈され警察署を出る黎智英氏=12日、香港(AP=共同)
保釈され警察署を出る黎智英氏=12日、香港(AP=共同)

 【香港=藤本欣也】中国共産党や香港政府への厳しい論調で知られる香港紙「蘋果(ひんか)日報」(リンゴ日報)が、香港国家安全維持法(国安法)に大きく揺さぶられている。同法違反容疑で創業者、黎智英(ジミー・ライ)氏(71)が逮捕され、本社ビルも家宅捜索を受けた。香港で保障されてきた「報道の自由」が危機にひんしている。

 12日未明に保釈された黎氏はこの日昼ごろ、本社ビルに姿を見せた。拍手で迎える社員たちに、「私たちには香港市民の支持がある。彼らを失望させてはならない。みんな、頑張ろう」と呼び掛けた。

 このビルに警察の家宅捜索が入ったのは黎氏が逮捕された直後の10日午前。8時間にわたり、編集局を含め強制捜査が行われた。「一国二制度」の下、言論・報道の自由を謳歌(おうか)してきた香港で、報道機関への大規模な家宅捜索は初めて。メディア業界は「驚きと恐怖」(香港記者協会の楊健興主席)に包まれた。

 そもそも、中国の習近平政権が国安法を香港に制定した狙いは、反中国共産党・反香港政府の活動を摘発することにある。国安法のターゲットは、抗議デモを経済的に支援してきた黎氏ら民主派の主要人物だけではない。香港の主要紙で唯一、反中の論陣を張る蘋果日報にも照準を合わせている。

 実業家の黎氏が1995年に創刊した同紙は、中国への返還以降、中国資本の浸透が進む香港の主要紙にあって、中国を自由に批判できる最後の砦(とりで)なのだ。

 国安法に対しても、「他紙も記者レベルでは反対しているが、新聞社として明確に異を唱えているのは蘋果日報だけ」(同紙の羅偉光・編集局長)という。

 国安法31条には、会社、団体などが同法で刑事罰を受けると、運営の一時停止を命じられるか、営業許可が取り消される-と規定されている。蘋果日報の場合、廃刊を意味する。

 警察は家宅捜索で、同紙の資金面も調べており、国安法が禁じる「外国勢力との結託」を念頭に捜査を進めている可能性がある。

 ただ、家宅捜索後の香港市民の反応は、中国・香港当局にとって予想外だったに違いない。黎氏が「蘋果日報は創刊以来、『自由と民主を支持する』という読者との約束を守ってきた」と胸を張る通り、市民たちは同紙を買い求めるために行列を作り、グループ会社の株を買った。繁華街では、「弾圧を恐れない!」の文字が躍る同紙を無言で掲げるデモも起きている。

 蘋果日報は6月末の国安法施行後、風前のともしびになろうとしている香港の自由を守るシンボルとなった。このリンゴが落ちれば、国安法の矛先は、香港駐在の外国メディアに向かう。座視できない。

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