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【黒瀬悦成の米国解剖】米政権が目指す共産中国の体制変更

トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月、大阪市(ロイター)
トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月、大阪市(ロイター)

 トランプ米政権は、中国の体制変更を目指そうとしている。

 ポンペオ国務長官が今月23日、西部カリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館で行った演説を聞き、真っ先に抱いた直感だ。

 ポンペオ演説は、歴代政権が過去約50年間にわたり進めてきた、経済や対話を通じて中国共産党体制を国際社会に組み入れようとする「関与政策」からの完全な決別を宣言した。

 代わりにポンペオ氏が打ち出したのが、一般の中国民衆との連帯を目指す、新たな対中関与の形態だ。

 同氏は「米国は中国の人々と関係を築き、彼らに社会的な力をつけさせなくてはならない。彼らは中国共産党とは完全に異なり、活力に満ちた自由を愛する人々だ」と指摘する。

 さらに、中国共産党が国民を監視し抑圧するのは「民衆が率直な意見を述べ立てることで自らの権力掌握が困難になることを、どんな外敵よりも恐れているためだ」と断じた。

 一連の言辞は、トランプ政権が「ならず者の専制国家」に位置付けるイランや北朝鮮、ベネズエラに対する非難と極めて似通っている。一般民衆を独裁体制と区別し、市民的自由の獲得に向けて自立と決起を促すのは、独裁体制を揺さぶる典型的な手法の一つだ。

 現在の中国で多くの国民が警察国家的体制への不満を抱かないのは、中国共産党が安定的な経済成長と物質的な豊かさを民衆に約束しているためでもある。

 だが、ハイテク分野で世界的覇権を目指す中国の手法とは、米国などの先進諸国からの先端技術や知的財産の窃取、自国では生産できない半導体部品の調達によって製品を低コストで開発・製造し、世界市場に割り込むという、自由経済システムを食い物にしていくことで成立している。

 中国はまた、欧米などに納入した通信機器を通じて相手国の経済・安全保障や先端技術に関する機微な情報を入手し、自国の覇権拡大に向けて活用していく「悪の連鎖」の確立を目指しているとされる。

 ポンペオ演説に代表される米政権の取り組みは、中国による一連の手口を打破し、今後の中国の一大成長エンジンであるハイテク分野の弱体化を図るものだ。

 まず、南部ヒューストンの中国総領事館の閉鎖は、中国が全米で展開する知的財産窃取を許さないとの明確な警告を突きつけた。

 また、米政権は5月、半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の工場を米国に誘致し事実上の管理下に置いたほか、華為技術(ファーウェイ)といった中国企業がTSMCなどの国際企業から先端部品を入手困難にする措置を次々と講じた。

 米戦略家のエドワード・ルトワック氏は「中国の通信機器やパソコン、産業機械などに使われる半導体はTSMC製品で占められている。米政権の措置は、中国への核兵器級の打撃となり得る」と強調する。

 さらに、米国が唱道する華為製品の排除に対しては、賛同する国々が徐々に増えつつある。

 中国がハイテク覇権の確立に挫折し、経済成長を維持できなくなれば、中国民衆が習近平体制を見放す事態は十分に現実的だ。

 体制変更にまで踏み込んだ米政権の対中政策は、ここからが本番だ。(ワシントン支局長)

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