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金正恩氏が姿消した3週間 北朝鮮で防疫厳格化 感染にピリピリ 

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(AP)
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(AP)

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に深刻化していた4月上中旬、北朝鮮でぜんそく症状の住民が、結核患者が入所している施設に強制隔離されていたことが分かった。隔離は新型コロナの検査や治療技術、資機材がない中、ぎりぎりの感染拡大防止策とみられ、北朝鮮当局が感染に神経をとがらせていた様子がうかがえる。(加藤達也)

 北朝鮮各地の住民と連絡を取り合う脱北者の男性(韓国在住)が明らかにした。防疫が厳格化された時期は金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の活動が公式に伝えられなかった3週間と一致。日本の情報当局も同様の情報を得ており新型コロナと金氏の動静の関係に注目している。

 金氏をめぐっては4月11日の朝鮮労働党中央委員会政治局会議への出席を最後に公式報道が途絶え、同月下旬は米メディアが重病説を報じるなど去就と動静に注目が集まっていた。姿を見せなかったのは政権中枢への感染予防の一環だった可能性もある。

 男性が4月中旬、中朝国境の茂山(ムサン)の知人に連絡したところ4月15日の金日成主席の誕生日を迎え、「中国からのコロナ感染を防ぐ」として警備が強化されたという。

 現地には少なくともその時点でコロナ感染確認のすべはなく、感染者の特定はできなかったが、郊外の結核病院に数十人を隔離。知人は「元々入院していた結核患者も混在しており、『コロナ』を理由に隔離された者の正確な数や症状も判然としていない」と話したという。

 現地の防疫部署には中央機関から「異状が現れた者は必ず隔離しろ」と指示が降り、「該当者がいない」と報告すると「そんなはずはない」と検閲団の調査を受ける。

 知人は男性に「検閲を受けると面倒なので、(仕事をしているところを示すために)ぜんそくや風邪の患者を結核病棟で強制的に隔離せざるを得なかったようだ」と明かしたという。

 経済活動も死活的に縮小し、恵山(ヘサン)では「チャンマダン(自由市場)」を閉鎖。だが商人は携帯電話で直売を続け、駅前やバス停など人が集まる場所にも小規模な取引場が自然発生した。

 経済開発に力を入れる羅先(ラソン)や新義州(シンウィジュ)では4月中旬に突然、中国からの物流統制が緩和されたという。男性は「この2地域は物流の大動脈。長期に遮断すれば餓死者が出る恐れもあり、緩和せざるを得なくなったのではないか」とみている。

 一方、平壌(ピョンヤン)では同じ時期、住民に「社会主義保健制度の優越性と正当性」の宣伝や「防疫こそが最高尊厳(金氏)を守ることになる」という認識の浸透が図られ始めた。

 「クラスター化」を避けるためか、集会ではなくスピーカーや戸別放送で音声のみによる「録音講演」が多用されているといい、所属ごとに自己批判などで忠誠心を確認する「生活総和」も個人報告に移行。

 新型コロナについて北朝鮮は現在も感染者の存在を認めないが、4月初旬の平壌では建物の消毒や食堂での“3密”回避などが厳格に実施され、「重苦しい暮らしを強いられている」と訴える人もいたという。

 外出時のマスク着用は北朝鮮でも義務化。ただ未着用者もおり、「大学生らが臨時編入された防疫監視チームが調べてマスクの不携帯が分かると反省文を書かせる」(住民の報告)。

北朝鮮情勢に詳しい麗澤大の西岡力客員教授の話「現地からの情報では、北朝鮮住民の間には『飢えて死ぬか、肺炎で死ぬかだ。黙って死んではいかない』などという声が全国に広がり、金正恩、与正の兄妹の責任を問う者も出て、暴動を恐れる治安機関は3月22日から非常警戒態勢に入ったと聞く。ウイルスの蔓延(まんえん)で独裁体制が揺らぐほどの大打撃を受けている」

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