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【台湾に生きる】逃亡生活を送る香港の大学生

台北市内で取材に応じるタイガーさん
台北市内で取材に応じるタイガーさん

 「台湾に来てから約半年、毎日がつらくて、頭がおかしくなりそうだ」。台北市内の某所。待ち合わせの時間に現れたタイガーさん(仮名、21)の開口一番の言葉だった。

 香港の大学に在籍する4年生で、昨年春に起きた中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」に抗議するデモで現場リーダーを務めた。一般市民に暴力を振るう警察、それを容認する政府に強い怒りを覚えた。仲間と一緒にデモの最前列に立ち、警察隊に投石したり、立法会(議会)の敷地に突入したりもした。平和的な抗議行動を行う人々が「和理非(和平・理性・非暴力)派」と称されるのに対し、過激な行為も辞さないタイガーさんらは「勇武派」と呼ばれた。「私はガラスを割ったかもしれないが、人を傷つけてはいない」とタイガーさんは強調した。

 暴れる姿は何度も防犯カメラに撮影された。家に帰る途中に警察に職務質問されたこともあった。6月末になると、仲間は次々と逮捕された。「とにかく逃げて」と家族と友人にしつこく言われ、台湾に渡ったのは7月の初めだった。

 今の香港の法律では、タイガーさんが犯したのは器物損害や不法侵入といった微罪だ。しかし、中国の官製メディアは彼らを「国家の分裂と政権転覆を狙う暴徒」と物々しく表現している。「香港のデモが中国によって弾圧されたあと、自分たち勇武派は中国に送られ、死刑や無期懲役に処されるのではないか」との不安が大きく、怖くて香港に戻れないという。

 一緒に台湾にやってきた仲間は少なくとも200人。観光ビザできているため、学校にも行けないし、働くこともできない。支援団体が見つけてくれたいくつかの住所に分かれて集団生活を送り、毎日は睡眠、食事、散歩しかやることがない。昔は大好きだった携帯電話のゲームをいま、なぜかする気にまったくならない。

 香港のニュースばかりをチェックしている。市民が警察に殴られる映像をみると心が痛む。デモ隊の最前列で警棒で殴られたときより100倍以上も痛みを感じるという。「市民を守るために勇武派になったのに、なぜいまは安全な台湾にいるのか」と自問自答を繰り返している。多くの仲間は精神的に不安定になった。タイガーさんも抗鬱(こううつ)剤を飲んでいる。

 台湾でいま、総統選挙が行われている。街宣車があちこちに走り回っているのを見て「私たちが香港で目指しているのはこれだ」と心の中で確認したという。タイガーさんは最近、台湾の歴史を勉強している。「民主化を手に入れるため、台湾の活動家たちは多くの犠牲を払ってきた。私たち香港の戦いは、まだ始まったばかりだ」と思ったという。(台北 矢板明夫)

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