PR

ニュース 国際

【中東見聞録】イスラエルが右傾化に見える本当の理由

 最大都市テルアビブなどでは2011年、ネタニヤフ政権への大規模な抗議デモが起きたが、この時も主な訴えは家賃や物価の高騰に対するものだった。労働党の主張は、こうした有権者に響くものがあるようにもみえる。

 だが、一方で東エルサレムやヨルダン川西岸に点在する入植地を取材してみると、宗教上の聖地に近い場所などを除けば、ノンポリといってもいい「入植者」に出会うことが多い。入植者といえば“ゴリゴリの右派”というイメージとはかけ離れている。理由を聞くと、「エルサレムは家賃が高いから」だという。

 入植地はもともと、アラブ各国やパレスチナゲリラに対する防衛拠点として築かれたものだとされるが、現在では、「東京都心は手が出ないから、通勤可能な範囲で郊外に住む」といった感覚に近いのかもしれない。

 つまり、一般的にはパレスチナに対して強硬な右派層が支持する政策だとみられがちな入植地建設は、住居問題という国内的な重要争点と絡み合ったものともなっているのだ。

 労働党が掲げるような再分配重視のバラマキ政策は、財源に不安があり、経済成長を妨げる要因にもなる。ならば、右派が進める、圧倒的な力の差を背景とした入植住宅の建設に乗っておけばいいではないか。そんな有権者心理が、労働党の凋落ぶりにあらわれているのではないか。左派の退潮は世界的な傾向とも軌を一にするものだ。

 だから、イスラエル政治の「右傾化」という単純なレッテル貼りは、必ずしも正確ではない。左派の言説が魅力を失っていることとワンセットで考えるべきだろう。

■続く「飼い殺し」状態

 イスラエルが西岸各地を分断する形で建設したコンクリート壁により、同国の治安に対する脅威は減った。エルサレムではもう何年も、「自爆テロ」と呼ばれるような事件は起きていない。

 それどころか、占領地の東エルサレムや西岸から通勤してくる安価なパレスチナ人労働者は、イスラエル経済になくてはならない存在として組み込まれている。イスラエルは今後も、パレスチナに国家樹立を認める(2国家)でも、パレスチナ人に同等の権利を与えて自国に取り込む(1国家)でもない、いわば「飼い殺し」状態を続けるだろう、というのが大方の見方だ。こうした現実の上に、現在の右派優勢の政治が成り立っている。

 11年の抗議デモで学生指導者の一人だったヨナタン・レヴィ氏は英紙ガーディアンへの寄稿で、「ユダヤ穏健派とアラブ社会との間の傷んだ橋を修復する」こと、つまり和平に前向きな層を糾合することが中道左派の復活につながると指摘していたが、現状では、右派中心の権力闘争に左派が割って入る余地は、非常に小さい。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ