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【中東見聞録】イスラエルが右傾化に見える本当の理由

 選挙戦でネタニヤフ氏は、国際法上、違法とみなされるヨルダン川西岸などでのユダヤ人入植地の建設を推進するのみならず、西岸の一部を併合することにも言及した。「青と白」のガンツ氏はすぐさま、「ネタニヤフ氏は私のアイデアを盗んだ」と張り合った。対パレスチナ関係は、いかにテロを防ぐかという「治安問題」ばかりがフォーカスされ、和平協議などは議論にさえならない観がある。

 これには無理からぬ面もある。

 パレスチナ自治政府の汚職体質や機能不全は以前からきわめて深刻だ。4年ごとに実施するはずだった自治政府トップを決める議長選は、現職のアッバス議長が選出された2005年以降は行われていないし、議会にあたるパレスチナ評議会の選挙も06年以来、無期限延期されたまま。現状では、和平によって「パレスチナ国家」が実現したとしても、十分な統治能力を発揮できないだろうとの疑念は拭い難い。

 パレスチナ人の多くも、自治政府の主流派が権力を私物化していると感じ、パレスチナ国家の樹立する「2国家共存」など不可能ではないかと失望している。1993年のオスロ合意を起点とした現行の和平プロセスは、すでに実質上、破綻しているのだ。

 米国のトランプ政権が、エルサレムをイスラエルの首都と認定したり、イスラエルによるゴラン高原併合や入植地建設を容認する姿勢を示したりしているのも、(多分に自身の再選に向けて国内の親イスラエル票を固めるためとはいえ)同様の認識に基づいている。

 そして、こうした現実を前に、イスラエルの左派系勢力は対抗軸を打ち出せずにいる。

■名門左派の凋落

 左派の代表格である労働党は、かつてイスラエル政治をリードする存在だった。初代首相ベングリオンらが創設したマパイ党を前身とし、中東和平に貢献したとして94年にノーベル平和賞を共同受賞したラビン、ペレス両元首相らを輩出した名門だった。

 しかし、近年は党勢が振るわず、今年4月の選挙では改選前から大幅減の6議席に落ち込んだ。新興政党ゲシェルと組んだ9月の選挙でも6議席にとどまった。いずれも得票率は5%に満たない。

 労働党は選挙で、公共住宅の建設▽最低賃金の引き上げ▽教育無償化▽障がい者手当の増額▽医療保険制度の拡充-など、典型的な左派政策を掲げた。そして惨敗したのだ。なぜだろう。

 ここ数年、イスラエルの都市部で有権者の声を拾うと、「住居費が高すぎて暮らしていけない」という不満を聞くことが多かった。特に、若い夫婦や子育て世代では深刻だ。

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