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【黒瀬悦成の米国解剖】深刻なロシアの米国分断工作 

次期米大統領選の最大の関心の一つは、ロシアによる選挙干渉の有無だ
次期米大統領選の最大の関心の一つは、ロシアによる選挙干渉の有無だ

 トランプ米大統領の再選がかかる大統領選を約1年後に控えたワシントンの政界関係者にとって最大の心配事の一つは、ロシアが2016年の前回大統領選に続き、またしても選挙干渉を仕掛けてくることだ。

 実際、米交流サイト「フェイスブック」は21日、ロシアが共和、民主両党の勢力がせめぎ合う激戦州に住む有権者を装った多数の偽アカウントを開設し、米国民の分断をあおる投稿を繰り返していたとして、問題のアカウントを凍結したことを明らかにした。

 偽アカウントはフェイスブックで1つ、写真共有アプリ「インスタグラム」では50が確認された。いずれも人種や移民問題、銃規制など対立が際立つ争点に関し、保守または左派の立場から敵対勢力を攻撃するようなメッセージを発信し、今年1月以降、米国内を中心に計24万6千のフォロワーを獲得したという。

 この件が注目されたのは、これらのアカウントが16年大統領選をソーシャルメディアを通じて揺さぶろうとした露政府系の「インターネット・リサーチ・エージェンシー」(IRA)と関連していたためだ。

 上院の情報特別委員会が今月8日に公表した超党派報告書によれば、IRAがプーチン露政権の指示の下、共和党候補のトランプ氏を支持する一方、民主党候補のクリントン元国務長官を追い落とす方向で世論工作を展開した。

 報告書はまた、IRAが黒人層を工作の重点標的に据え、分断と対立を扇動したと指摘した。

 全米の複数の都市では14年から16年にかけて白人警官による黒人の射殺をきっかけとする大規模暴動が相次ぎ発生した。報告書は、白人警官の暴力映像についてもIRAが拡散させた証拠があるとしており、黒人暴動の参加者はまんまとロシアの術中にはまっていた可能性がある。

 問題は、IRAに連なる偽アカウントの活動が16年11月の大統領選投開票後、沈静化するどころかむしろ活発化したことだ。

 これは、ロシアがトランプ氏が当選してからの約3年間、米国を社会的、政治的に分断しようとの取り組みを選挙とは直接の関係なしに継続的に展開していたことを意味する。

 ギャラップ社調査(8月22日発表)によると、インターネットを情報源にしているとの回答は64%に上り、地元紙27%やCNN23%を大きく上回った。ソーシャルメディアを含むネット媒体の影響力からみて、米有権者が引き続きロシアの「謀略情報」にさらされる危険は極めて大きい。

 一方、ソーシャルメディアがロシアの干渉を排除する取り組みを進めたとしても、運営側自体が政治的に偏向していると見なされれば元も子もない。

 例えばフェイスブックに関しては多数のトランプ支持者や保守系活動家が書き込みの内容を理由に「アカウントを凍結された」として、「運営方針が左派寄りだ」と猛反発している。

 別の調査では、有権者の62%が「ソーシャルメディアは利用者が閲覧できるニュースの内容を管理し過ぎている」と回答。ただ、管理を緩めれば、真偽不明のデマや陰謀論の拡散が避けられないのも事実だ。

 ロシアの選挙工作は、想像以上の打撃を米ネット社会に与えているのだ。(ワシントン支局長)

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