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【中東見聞録】難民問題で欧州を脅すトルコ シリア「安全地帯」が新たな火種

9月8日、シリア北部で合同パトロールにあたる米兵とトルコ兵。両国は「安全地帯」の設置で合意したが、その範囲などで溝も残っているとされる(ロイター)
9月8日、シリア北部で合同パトロールにあたる米兵とトルコ兵。両国は「安全地帯」の設置で合意したが、その範囲などで溝も残っているとされる(ロイター)

 欧州に流入する難民・移民が再び増加する可能性が出てきた。シリア難民の最大受け入れ国であるトルコのエルドアン大統領が、欧州や米国から十分な支援を得られなければ、「(難民らに)欧州へのルートを開放しなくてはならなくなる」と警告し始めたのだ。こうした発言の裏に、トルコが頭を痛めるシリア北部情勢をめぐって欧州や米国から支援や譲歩を引き出す狙いがあるのは明らかだ。難民問題が、外交的な駆け引きの材料となっている。(前中東支局長 大内清)

■欧州への痛烈メッセージ

 「(難民問題という)重荷をトルコ一国で背負うことはできない」(5日)

 「トルコは、シリア北部から来る難民の新たな波を扱い切れないだろう」(10日)

 エルドアン氏はこのところ、難民問題についてこんな発言を連発している。

 トルコが抱えているシリア難民は約360万人。それがさらに増加する事態となれば、現在のところは阻止に努めている欧州への密航を黙認せざるを得なくなるぞ-というメッセージだ。難民の急増を機に排外的なポピュリズム(大衆迎合主義)勢力が台頭し政治の混迷が深まっている欧州各国にとっては、痛烈な“恫喝”にも感じられる言葉だろう。

 エルドアン氏の狙いの一つは、トルコが米国との合意の上でシリア北部に設置を進めようとしている「安全地帯」構想への支援を、欧州各国から引き出すことにある。

 同構想は、内戦の混乱に乗じてシリア北部で伸長した少数民族クルド人武装勢力をめぐる、トルコと米国の妥協の産物として生まれた。

 トルコは、クルド勢力を自国への脅威とみなしている。同勢力が、トルコ政府への武装闘争を展開する非合法武装組織「クルド労働者党」(PKK)の傘下にあるからだ。シリア北部にクルドの勢力圏が確立されれば、将来的にトルコ政府が容易に手を出せない出撃基地と化す恐れがある。

 これに対し米国は、シリアにおけるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦での地上戦力として利用するため、クルド勢力に軍事支援を行ってきた。

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