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【記者発】白人至上主義の青年と ニューヨーク特派員・上塚真由

 2年前の夏。米南部バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者と反対派の衝突が起きたとき、現地での取材でクリスという当時21歳の白人の男性に出会った。

 衝突の現場で記者が催涙スプレーを浴びてうずくまっていると、心配して向こうから声をかけてきたのだ。見た目より若い印象を受けるクリスは、一人で中西部オハイオ州からやってきたという。

 クリスも白人至上主義者。通っていた大学で多数派だった黒人生徒からいじめを受け卒業後に目指した大手化学メーカーの就職に失敗。現在の配達員の仕事に不満を持ち、「学校でも就職でも優遇されるのは黒人だった。白人だけが損をしている」と語った。

 白人至上主義とは、白人が支配する社会の復活を求め、人種や民族などの多様性を許容しないという極めて危険な発想だ。ただ、おびただしい血が流れた暴動の中、記者を気遣う一面を持つ青年がいたことには驚いた。

 米国では若者の間でこうした危険な思想が広まっており、今月3日には南部テキサス州エルパソで22人が殺害される銃乱射事件が起きた。容疑者は21歳の白人。非白人や移民に対する激しい憎悪をつづった「犯行声明」をネット上に出し、米司法当局も「国内テロ」と重大視して対策を本格化させている。

 事件を受けて排他的な言動を繰り返してきたトランプ米大統領の責任を問う声が高まっているが、米社会の病巣はそこにとどまらない。多様化する社会から取り残されたと感じる若者は増え、危険な思想への傾倒を防ぐ有効な手立ては見つかっていない。

 そして残念なことに、白人至上主義者に話を聞くと「日本のような移民がいない国が理想だ」と口々に語るのだ。米国とは歴史や文化が異なる日本が多様化に乏しいイメージを持たれるのは仕方ないが、「日本は人種差別を容認する社会ではない」と反論するのが精いっぱいだった。

 「白人至上主義のことを分かってほしい」。メールを送ってきたクリスとしばらくやりとりを続けたが、白人至上主義の思想に反発し続けると「価値観を押しつけないでくれ」と返信が途絶えた。恐怖の現場で気遣ってくれた青年が今後、凶行に走らないことを祈るしかない。

【プロフィル】上塚真由

 平成12年入社。さいたま支局、文化部などを経て社会部では司法クラブで事件や裁判取材を担当。同28年5月からニューヨーク特派員。

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