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サウジ、成人女性の旅行制限を撤廃 残るイスラムの男女格差

改革を進めるサウジアラビアのムハンマド皇太子
改革を進めるサウジアラビアのムハンマド皇太子

 【カイロ=佐藤貴生】サウジアラビア政府は、成人女性が旅行する際に義務づけてきた男性の「後見人」の承認制度を撤廃すると決定した。ロイター通信などが伝えた。国内で大きな権力を握るムハンマド皇太子(33)の社会・経済改革の一環だが、イスラム教の教えに基づく男女格差はなお残り、自由の拡大をめぐる社会と政府の駆け引きは今後も続きそうだ。

 制度撤廃はサウジ政府が2日に発表した。成人女性が旅行する際に必要だった夫や父、親類など男性の「後見人」の許可が不要になる。子の出生や婚姻、離婚の届け出が女性にもできるようになるほか、就職の際の性別による差別を禁じるとした。

 サウジは人口増加率が年2%以上で人口膨張が懸念される。雇用創出は待ったなしの課題で女性の労働人口の増大も目指してきた。1年前、世界で唯一禁じてきた女性の車の運転も解禁したのも、移動の自由を拡大して女性の就労人口を増やす狙いがあるからだ。

 サウジ王室はイスラム教の聖典コーランを厳格に解釈するワッハーブ派に基盤を置き、女性は男性に守られるべき存在だといった教えを厳格に適用してきた。今回の決定は女性らから歓迎されているが、戒律に忠実なイスラム保守層には反発もあるとされる。

 他方で、今回の決定をめぐってはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の急速な浸透が背景にあるという要素も見逃せない。「後見人制度」を批判するサウジ人女性のラハフ・モハメドさん=当時(18)=が1月、旅行先のクウェートで同行した家族の目を盗んでタイ・バンコクに向かい、空港内のホテルに籠城した事件はその象徴的な事例となった。

 「連れ戻されそう」「(帰国したら)家族に殺される」。モハメドさんは亡命を求める書き込みや動画を次々に投稿し、それを欧米メディアが刻一刻と報じる事態となった。モハメドさんは国連の仲介によりカナダへの移住を果たした。

 個人の訴えが世界をかけめぐり、国連まで動かす時代となり、サウジが独自の政策を貫くことはますます困難になるとみられる。

 今回、旅行の制約は緩和されたものの、女性が結婚したり一人で生計を立てて暮らしたりする際に、男性後見人の許しが必要なことに変わりはない。サウジ政府はイスラム保守層を懐柔しつつ、徐々に女性の自由を拡大していかざるを得ないものとみられる。

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