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【宮家邦彦のWorld Watch】インド太平洋は戦略空間か

昨年10月、共同記者発表を終え握手を交わすインドのモディ首相(左)と安倍晋三首相=首相官邸(春名中撮影)
昨年10月、共同記者発表を終え握手を交わすインドのモディ首相(左)と安倍晋三首相=首相官邸(春名中撮影)

 筆者が本コラムで「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」につき書いたのは9カ月も前のことだ。爾来(じらい)日米両政府は盛んにFOIPの重要性を強調するが、日米豪印にとってFOIPとは一体何なのか。アジア太平洋に新たな戦略空間は存在するのか。これに対する中国の対応はどうか。あれから1年以上もたつのに、これらの疑問に対する回答はいまだない。

 そこで先週末、筆者の属するキヤノングローバル戦略研究所はインド太平洋での政治危機や軍事衝突を想定した物騒な演習を実施した。同研究所が年に3回実施している政策シミュレーションの一つであり、今回も40人近い現役政治家、公務員・自衛官、地域専門家、国際政治学者、ビジネスパーソン、ジャーナリストが集まり、日米中豪印等(とう)各政府・報道関係者を一昼夜リアルに演じてくれた。彼らの貴重な知的貢献に改めて深甚なる謝意を表したい。

 シナリオの想定は202X年、ベンガル湾に近いアンダマン諸島等を含むインド洋が舞台だ。状況は急変し、まずスリランカとモルディブでクーデターが発生する。アンダマン諸島付近では中国海軍艦船が海上自衛隊艦船に火器レーダーを照射し、緊張が一気に高まる。フィリピンでは元米海軍基地があったスービック湾で操業していた韓国造船会社が4億ドルの負債を抱えて破綻し、中国企業が買収を狙っている。さらにマラッカ海峡付近ではついに米中海軍艦船が交戦状態となり、双方に多大の損害が出ただけでなく付近を航行中の日本のタンカーも被弾炎上するという想定だった。当然シミュレーションは冒頭から白熱化した。

 以下は同シミュレーションの結末と筆者の見立てだ。もちろんシミュレーションはあくまで仮想空間であり、結果は現実と当然異なる。以上を前提にお読みいただきたい。

 (1)経済的合理性と地域戦略

 スービック湾の韓国企業買収で中国チームは戦略的利益より経済的合理性を優先し、強引な買収は控えた。一見中国らしからぬ行動だが、考えてみれば、万一中国が戦略的に重要なスービック湾でプレゼンスを確保すれば、米国とその同盟国の危機感を高め、逆効果となっただろう。経済合理性と戦略的利益の相反を考える上で極めて興味深い結果である。

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