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【主張】金正男氏暗殺裁判 独裁者の犯罪に向き合え

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏の暗殺事件で、殺人罪に問われた女2人のうち、インドネシア人の被告が釈放された。

 正男氏は2年前、マレーシアの空港で顔に毒を塗られて殺された。検察は今回の起訴取り下げ理由を開示しておらず、残る「実行役」の被告はベトナム人1人となった。

 事件当時空港にいた北朝鮮の男4人は国外に逃亡し、在マレーシア北朝鮮大使館の関係者も帰国した。事件の真相が何一つ解明されないまま、幕引きに向かうことを強く憂慮する。

 綿密に計画された組織的犯行であるのは明らかだ。「いたずら動画」の撮影かと思ったという2人の審理から全体像に迫ることが困難とは当初から予想できたが、それで済ませていいわけはない。

 独裁者の異母兄が他国で毒殺されたのである。正恩氏が指示した「国家テロ」という視点から、改めて関係国、関係機関を挙げて真相解明に取り組むべきだ。

 正男氏暗殺には化学兵器の神経剤VXが使用された。国連安全保障理事会の北朝鮮決議は生物、化学を含む、すべての大量破壊兵器の廃棄を求めている。安保理として事件を看過できないはずだ。

 米国と北朝鮮による先の首脳会談が物別れになったとはいえ、非核化交渉は途上にある。だが、国家テロや人権侵害を見て見ぬふりしていいことにはならない。

 核放棄を求めるのと同時に、正男氏暗殺事件を含む他の懸案についてもただし、対処を求めていくべきだ。日本人拉致被害者の全員解放の要求は当然である。

 ましてや、正恩氏は非核化の意思を繰り返し口にするだけで、実行に移していない。非核化交渉の進展を優先させ、遠慮する必要などまったくないのだ。

 気がかりなのは、昨年6月の米朝首脳の初会談以降、経済制裁や軍事圧力の緩みが散見されることである。正男氏暗殺事件で冷却化した北朝鮮と東南アジア諸国との関係が改善基調にあるのも、無関係ではないだろう。

 2度目の米朝会談は、自国民が実行犯として拘束されたままのベトナムで行われた。その際、同国首脳が正恩氏を歓待し、友好を確認したのに違和感を覚える。北朝鮮が懸念に応えない限り圧力を緩めない。友好国に求められるのは率直にこう告げることである。

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