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【産経抄】10月10日

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 認知症の進んだ祖母は、しばしば家を抜け出して徘徊(はいかい)する。孫の奈々子が、懸命に行方を捜していると、携帯に祖母からメールが届く。笑顔の絵文字だけが延々と続いていた。作家、大岡玲さんによる「絵文字」をテーマにしたショートショートである。絵文字は日本で生まれ、世界に広がった。

 ▼インターポールの名で知られる国際刑事警察機構(ICPO)の孟宏偉総裁が、中国に一時帰国中に消息不明となった。フランスに残った妻にあてたメッセージにも、絵文字が使われていた。ただし笑顔でもハートマークでもない。禍々(まがまが)しい刃物の絵文字である。

 ▼孟氏は姿を見せないまま、辞表を提出した。中国政府は、収賄容疑などで調べていると発表するだけだ。孟氏は、汚職を摘発され無期懲役となっている元最高幹部、周永康氏の側近とされる。周氏はかつて習近平国家主席の政敵だった。となれば、権力闘争の臭いがぷんぷんする。

 ▼ICPOは、犯罪者の国際指名手配やテロ関連情報などを扱っている。2年前に初の中国人総裁が誕生した際、人権団体から懸念の声が上がった。中国政府が、国外逃亡中の反体制派追跡のために悪用するというのだ。

 ▼それが一転して、国際機関のトップの身柄拘束に踏み切った。100日以上も姿をくらましていた国際的な人気女優の消息が、最近になってようやく伝えられたばかりである。異常事態の連続には、懸念を通り越して背筋が寒くなってくる。

 ▼習氏は、昨年北京で開かれたICPOの総会の演説で強調していた。「ますます多くの国民が、(中国を)世界で最も安全な国の一つと考えるようになった」。国民が次々に失踪していく国の指導者が、ブラックユーモアを披露したとしか思えない。

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