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【北京春秋】中国に狂言ブーム? 萬斎人気が「風刺の精神」に火を付けるか

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【北京春秋】
中国に狂言ブーム? 萬斎人気が「風刺の精神」に火を付けるか

記者会見する東京五輪・パラリンピックの開閉会式の総合統括を務める狂言師の野村萬斎さん=7月31日午前、東京都港区 記者会見する東京五輪・パラリンピックの開閉会式の総合統括を務める狂言師の野村萬斎さん=7月31日午前、東京都港区

 先日、北京で催された狂言が大当たりをとった。日本でも鑑賞したことはあるが、観客の笑い声でせりふが聞こえなくなったのは今回が初めてだ。

 演者は人間国宝の野村万作氏(87)、長男の萬斎氏(52)、孫の裕基氏(18)ら。演目は酒飲みの滑稽さを描く「棒縛(ぼうしばり)」、夫婦の絆を問う「川上(かわかみ)」、自然破壊を風刺した「茸(くさびら)」の古典ばかりだ。なぜ受けたのか?

 まずは、中国における萬斎人気。映画「陰陽師(おんみょうじ)」のヒットで萬斎氏には女性ファンが多い。9年ぶりの公演に詰めかけた観客も9割が女性だった。

 次に、中国語の字幕の効果。狂言のせりふは室町から江戸時代にかけての言葉だが、日本では一般に字幕は付かない。万作氏も「日本人が日本で見るより、中国人が中国で見る方が分かりやすい皮肉な状況となった」と振り返った。

 もちろん、萬斎人気は狂言人気を意味するものではない。しかし元来、風刺の精神が旺盛な中国である。今回の黄色い歓声ならぬ“黄色い笑声”がどんな色に変わっていくか。

 ただでさえ、政治的には“物言えば唇寒し…”の雰囲気が広がりつつあるこの国だ。「見る人の心を映し出す」(萬斎氏)という狂言を通して中国社会を見るのも一興だろう。

 来年も中国公演が実現することを切に願う。(藤本欣也)

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