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【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】(32)思う存分生き、いい詩をつくりたかった スパイとして処刑された林和

粛清後、名誉回復され、平壌の愛国烈士陵に葬られた世界的舞踊家・崔承喜の墓
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 人気作家、松本清張に『北の詩人』(昭和38年)という作品がある。主人公の詩人、林和(イムファ)(1908~53年)は実在の人物だ。詩集『玄海灘』などで知られ、日本統治時代の朝鮮で、左翼色が強い「朝鮮プロレタリア芸術同盟」(カップ、大正14年結成)の中心人物として活躍、戦後の昭和22年、北朝鮮へ渡ったが、28年8月の軍事裁判でアメリカのスパイと認定され、処刑された。

 『北の詩人』で、林はカップ解散(10年)前後から“転向し”密(ひそ)かに軍部などに協力していた「暗い過去」の発覚に怯(おび)える人物として描かれる。戦後、それを米諜報機関に弱みとして握られ、スパイとして北朝鮮へ渡ることを余儀なくされてしまう…という設定だ。小説なのか、実録なのか判然としないが、巻末には長大な軍事裁判の判決文まで掲載されている。

 作品の中で、林の「暗い過去」のひとつとして挙げられている仕事に、昭和16年7月に、日本陸軍の朝鮮軍報道部が製作した国策映画『君と僕』への協力があった。朝鮮人志願兵として最初の戦死者となった李仁錫上等兵をモデルに、志願兵制度や内鮮一体をPRするために製作された映画で、平成21年に、フィルムの一部が見つかり、ニュースにもなった。

 主役は、テノールの人気歌手、永田絃次郎(げんじろう)(金永吉)、相手役は満映出身の大スター、李香蘭という豪華キャスト(ほかに、三宅邦子、大日向伝、小杉勇らが共演)。監督の日夏(ひなつ)英太郎(許泳)も朝鮮出身である。林は映画の校正を担当したという。

 それが事実であったとしても戦時体制下で、林や永田ら朝鮮人でも軍部への協力を求められれば拒否するのは難しかっただろう…というより当時、多くの朝鮮人は同じ側として戦争熱に取りつかれていた。陸軍の朝鮮人志願兵制度がすさまじい競争倍率(昭和18年の採用予定約5300人に対し30万人以上が殺到)になっていたことは以前(25回)書いた通りである。

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