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【緯度経度】北との「影の外交」探ったフランス 三井美奈

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【緯度経度】
北との「影の外交」探ったフランス 三井美奈

北朝鮮の政府代表部に掲げられた同国旗=2014年、スイス・ジュネーブ(ロイター) 北朝鮮の政府代表部に掲げられた同国旗=2014年、スイス・ジュネーブ(ロイター)

 パリ14区に、18世紀から続くれんが建ての古い病院がある。9年前、謎の東洋人男性が随員3人を連れ、診察室を訪ねた。

 泌尿器科医のベルナール・ドブレ氏(73)が患者を見送った直後、別の男が入ってきて「彼の病状を教えなさい」と詰め寄った。フランスの諜報機関、対外治安総局(DGSE)の情報員だった。ドブレ氏は、患者がかつて北朝鮮の「ナンバー2」とされ、後に処刑される張成沢(チャン・ソンテク)氏だと知った。「医者の守秘義務を理由に何も言いませんでした」と話す。

 国会議員でもあったドブレ氏は翌年、平壌に招かれた。内視鏡など1千万円相当の医療機器を持ち込み、言われるままに50~70歳くらいの男の手術をした。展望レストランで張氏の歓待を受け、「仏産ワインにフォアグラ、仏産葉巻まで出てきて驚いた」と回想する。

 北朝鮮にとって欧州は国交のない日米と異なり、技術輸入や人材育成の拠点だった。欧州連合(EU)28カ国中、26カ国が国交を持つ。英独は大使館を置く。フランスは国交がないのに縁が深い。特に仏人医師たちは、さながら「金一族の主治医」だ。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の母は2004年、パリで乳がん治療を受けた後に死亡。張氏は正恩氏の叔父にあたる。08年に訪朝したフランソワグザビエ・ルー医師は「脳卒中に倒れた金正日(キム・ジョンイル)総書記を治療した。正恩氏がよく見舞いに来た。おとなしい人だった」と証言した。

 フランスは冷戦中、米ソのはざまで独自外交を探り、米国に先駆けて1964年に中国と国交を樹立。これが北朝鮮との接点になった。74年、訪朝したフランスの駐中国大使は「みんな中国人より身なりがよい。日本人と言っても通じそうだ」と公電に記した。

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