産経ニュース

【米朝首脳会談】戦争終結より非核化が先だ 外信部長 渡辺浩生

ニュース 国際

記事詳細

更新

【米朝首脳会談】
戦争終結より非核化が先だ 外信部長 渡辺浩生

 米朝首脳が史上初めて対面する日を迎えた。

 金正恩朝鮮労働党委員長は叔父を処刑し、異母兄の暗殺も指示した残酷な指導者である。ルールや常識を無視するトランプ大統領を相手に、国際社会の自身の印象を塗り替え、体制生き残りを狙ってくるはずだ。

 完全非核化のゴールへ動き出すのか。日本人拉致問題の解決に道を開くか。演出される融和ムードに惑わされず、「歴史的」会談の成否を冷静に見極めたい。

 とりわけ、トランプ氏の心変わりには注意を要する。非核化実現の長期化をにおわす一方で、朝鮮戦争の終結宣言に突如、意欲を見せたからである。

 朝鮮戦争は1950年6月、北朝鮮軍が韓国側に攻め込んで勃発した。米軍主体の国連軍が編成され、途中で中国義勇軍が参戦。53年に米中朝3者が休戦協定を結んだが、国際法上は戦争状態が続いている。

 米国による核使用の恐怖により北朝鮮は休戦直後から核開発に着手した。国際社会を欺きつつ、昨年11月には米本土全域が核攻撃圏内と宣言するに至る。

 以後、対話路線に転じたが、「朝鮮半島の非核化」という姿勢を譲らぬ。核を全廃するなら、米国の核の傘や在韓米軍も対象にせよ、といい出しかねない。

 溝が埋まらぬ非核化プロセスを一度の会談で具体化するのは難しい。それより「忘れられた戦争」にけりをつければ、中間選挙前に歴史的成果をアピールできる。トランプ氏がそう踏んだのなら、勇み足である。

 正恩氏の狙いは、終結宣言を弾みに、中韓を交え休戦協定を早期に平和協定に転換することだ。そうなれば、国連軍司令部は解体となる。米国の軍事的選択肢は制限され、北は核をすべて手放す前に体制保証という見返りを手にできる。

 「平和協定がいったん結ばれれば後戻りできず平和体制下で北に核が温存されかねない」。倉田秀也・防衛大学校教授は警告する。

 朝鮮戦争が泥沼化したのはなぜか。50年9月の仁川上陸作戦を成功させたマッカーサー率いる国連軍が、38度線の回復から「統一朝鮮樹立」に戦争目的を拡大し、中国の介入を許したことにある。中間選挙を前にトルーマン政権は「印象的な軍事的勝利を政治的に利用したいと考えた」(神谷不二著『朝鮮戦争』)。

 相手を侮り目先の政治効果を狙う拙速な目的変更は、予想外の危険を伴う。

 68年前の教訓だ。

「ニュース」のランキング