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【湯浅博の世界読解】92歳の返り咲き、マハティール政治の「合理性」

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【湯浅博の世界読解】
92歳の返り咲き、マハティール政治の「合理性」

マハティール氏(共同) マハティール氏(共同)

 国王に恩赦を求め釈放される見通しで、1、2年後には首相職をアンワル氏に譲ると聞いて驚くばかりだ。アンワル氏が拘束された場面を、事務所内で目撃していたからなおさらである。

 今回の出馬は、老いたマハティール氏の国を思う心が純化して、使命感だけに突き動かされた行動なのだろう。ナジブ政権が中国から550億リンギット(約1兆5300億円)という巨額の借金をして、全長620キロのマレー半島横断鉄道を発注したことが、「債務のワナ」に陥りかねないからだ。

 かつてマハティール氏自身が、台頭する中国を見ながら「ルック・イーストには中国も入る」と解釈を変更し、経済人と北京詣でしたことがあった。しかし彼の合理主義は嫌中、親日ではなく、国益のためならどの大国とでも手を結ぶナショナリズムなのだ。

 中国が提唱する広域経済圏構想「一帯一路」を否定はしないが、スリランカなどが債務返済ができなくなり拠点港を99年租借させられる事例を見ている。中国がマレーシアの港湾を潜水艦の寄港地にするとの観測もあり、マハティール氏が「軍艦は見たくない」と述べたのは、中国に植民地主義と同じにおいを感じたのかもしれない。

 アジアの卓越した政治家には、欧州植民地主義と闘ってきたナショナリズムと、政治の安定を図るために練る合理主義が同居している。その典型例がマハティール政治ではないか。(東京特派員)

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