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【平昌五輪】
習近平氏の個人崇拝進むか 4年後の北京五輪は?
「住民1人あたり33平方メートル分の新たなマンションと50万元(約840万円)が補償された。申告期限があり、出産予定を早めて手術で産んだ人もいた」。地元の20代女性はそう証言する。崇礼に別荘を保有する北京市の男性は「あの大きな集落がわずか1年で消えた」と驚きを隠さない。
だが、崇礼での五輪開催には不安要素もある。崇礼の冬の平均気温は氷点下12度だが、標高の高いスキー場周辺では日中も氷点下20度前後まで下がる。さらに強風、雪不足への懸念もあり、平昌五輪の課題はそのまま引き継がれる。
北京冬季五輪の開催時期は、中国共産党の政治的な節目にあたる。開催前年の21年は共産党結党100年で、「小康社会(経済的にややゆとりのある社会)」を全面的に実現する目標期限でもある。1990年代まで河北省有数の貧困地帯でありながらリゾート地に生まれ変わった崇礼での五輪開催は小康社会実現を示す絶好の機会だ。
2008年に中国が初めて開催した北京夏季五輪後、中国当局は大国としての自信を深め、それまでの対外的な対立を避けて経済発展を優先させる外交方針「韜光養晦(とうこうようかい)」からの脱却を進めた。現在、中国共産党内では習氏への権力集中の動きが急ピッチで進められているが、北京冬季五輪は偉大な指導者としての習氏の姿を国内外に見せつける政治的な舞台となりそうだ。