【アメリカを読む】米国は中露の影響力増大を防げるか 米国家安保戦略を読み解く
【欧州】
中国が巨大経済圏構想「一帯一路」で勢力圏を拡大して強国の道を進むのに対し、ロシアはサイバー攻撃などで米国の民主主義を弱体化させ、同盟関係に楔を打ち込むことで米国の影響力をそぐことをたくらむとみる。NSSが前線として挙げたのが欧州だ。
ロシアは北大西洋条約機構(NATO)を通じた米国の関与や、欧州の「機構や政府」を弱体化しようとしていると指摘した。トランプ氏が英国の欧州機構(EU)離脱を歓迎していることには触れていない。
【中東】
イランによる核合意の順守を認めていないトランプ政権はイランやイスラム過激派の脅威をオバマ前政権以上に強調する。「地域の問題の原因はイスラエルではなくテロ組織やイラン」(NSS)だとし、「イスラエル対アラブ諸国」の構図を塗り替えるためだ。
NSSは中東諸国が「イスラエルと共通の脅威に立ち向かうという共通の利益をますます見いだしている」と強調した。
【南・中央アジア】
トランプ政権が17年8月に発表したアフガニスタン新戦略でも懸念が示されたパキスタンによるイスラム武装勢力への支援を、NSSも「地域を不安定化させる行動」と非難した。
アフガンへの軍事支援でイスラム原理主義勢力タリバンとの和平条件を整えるとする一方で、パキスタン政府にも武装勢力に対する「断固とした行動」を要求した。中国が南アジアでの影響力を強める中、各国の主権を維持するため協力することも明記した。