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【矢板明夫の中国点描】対印紛争で習近平氏が狙うのは… 国内矛盾を転嫁?毛沢東の手法を踏襲

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【矢板明夫の中国点描】
対印紛争で習近平氏が狙うのは… 国内矛盾を転嫁?毛沢東の手法を踏襲

 中国とインドの国境付近は標高が高く、無人地帯もあり、国境が曖昧なところも多い。中国軍は62年10月、インドが実効支配している複数の係争地に侵攻し、インド軍を圧倒した。翌11月になると、中国軍は優勢なまま全面的な停戦と撤退を一方的に表明。占拠した係争地をインド側に返す形となった。

 この中印紛争を主導したのが毛沢東だった。国内の矛盾を対外紛争に転嫁させることが目的だと指摘された。自ら主導した大躍進政策が失敗し、3000万以上の餓死者を出したことで、党内で劉少奇ら毛に対する不満勢力が大きくなりつつあった。毛はインド侵攻を通じて、党内を引き締め、軍への掌握を確認する目的があったといわれた。

 軍事行動を仕掛けるタイミングも計算されたものだった。当時、世界の関心は米ソによるキューバ危機に向けられていた。国際社会は中印紛争に介入してこないと毛が判断したといわれる。内政がうまくいかないときに、周辺国との間でトラブルを起こすのは毛の常套手段である。

 習近平政権を取り巻く昨今の内外情勢は、62年当時と近いところがある。国内経済が低迷し、秋の党大会に向けて国内の権力闘争が白熱している。毛沢東のような指導者を目指す習氏は、党内で自らの力を誇示する必要がある。

 それに現在、国際社会の関心は北朝鮮と米国の対立に寄せられており、とくに米国は中国の協力を必要としている。習政権がインドと小規模な軍事衝突を起こしたとしても、米国が介入する可能性は低いというのが中国の読みだろう。

 習氏はいま、国内外の情勢を見極めながら、その行動を起こすXデーを探しているのかもしれない。(外信部次長)

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