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【ロシア万華鏡】
「自由とは“もろい”もの。守らなくてはならない」露ドキュメンタリー映画の重鎮のビタリー・マンスキー氏に聞く

キューバや北朝鮮など社会主義諸国の実態や、ソ連、ロシア社会の影に焦点を当てた作品で知られる露ドキュメンタリー映画界の重鎮、ビタリー・マンスキー(53)。北朝鮮のプロパガンダ(政治宣伝)の実態を暴露した「太陽の下で -真実の北朝鮮-」は2017年1月、日本でも公開される。このほどモスクワで上映されたウクライナ紛争をテーマにした最新作「ラドヌウィエ(親類たち)」のラストで同氏は、ロシアを去った事実を明らかにした。現在、ラトビアで活動を続けるマンスキー氏に、その思いを聞いた。(モスクワ 黒川信雄)
--あなたの作品の多くはソ連に結びつけられている。なぜか
「私は非民主主義の国(旧ソ連=マンスキー氏は現在のウクライナ出身)に生まれた。ソ連の“全体主義”は何百万もの無実の人々を犠牲にし、その人生を台無しにした。全体主義が人の人格形成にどう影響するかということに、強い懸念を持っている。
だから私は、ソ連時代のようなキューバに向かい、スターリン時代のような北朝鮮に向かった。そこから自身の国や家族、そして自分の歴史に対する答えを探そうとした。そのような視点のプリズムを通じて、これらの非民主的な国々を見てきた。
私の作品は、もし日本や欧州の監督が北朝鮮で撮影をしたものがあったならば、きっと大きくかけ離れているのだと思う。その国に対する視線や関係性が最初から違うからだ」