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【外信コラム】
台湾有情 嘘から出たマコト

 かつて日本領台湾で生まれた日本人子女は「湾生」と呼ばれた。「湾生と台湾の絆を映像に残したくて-」。台湾在住の女性、Mさんは「家を売った」という。その資金で日本から高齢の湾生たちを招いて、故郷再訪場面を撮影すると聞き、東部の花蓮で涙の帰郷に立ち会った。確かに湾生と台湾の絆を記録できる最後の機会といえるかもしれない。

 Mさんは30代後半。日本語は話せないが日本人という。「なぜ湾生に興味を」と問うと、「他界した祖母が湾生だった」と話す。幼時に母親と死に別れ、「6歳まで青森で母方の祖母に養われた後、台湾人の養父に引き取られた」という。

 だが取材するうちに、経歴に関してつじつまが合わないことに気づいた。それを指摘すると、長い沈黙の後で「台湾人です。ごめんなさい」と嘘を認めた。

 「私は日本人」「湾生の孫」と嘘をついた理由は分からない。親日的な台湾で嘘の居心地の良さから抜け出せなくなり、その代償として湾生の記録を残すことを自分に課したのだろうか。

 Mさんの企画は地元の花蓮県なども支援している。嘘から生まれた企画という点では悩ましいが、制作スタッフはプロで、何より記録対象の湾生と台湾の絆は真実。どのようなドキュメンタリーができあがるだろうか。(吉村剛史)

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