ユネスコ「世界の記憶」改革 来年10月の実現目指し加盟国の作業部会設置 - 産経ニュース

ユネスコ「世界の記憶」改革 来年10月の実現目指し加盟国の作業部会設置

 【パリ=三井美奈】国連教育科学文化機関(ユネスコ)は「世界の記憶」(世界記憶遺産)の制度見直しに向け、加盟国による作業部会を設置する方針を決めた。2015年の「南京大虐殺文書」の登録以降、問題が指摘されていた「密室審査」を加盟国主導で見直し、来年10月に改革実現を目指す。改革への日程を示す「行動計画」案は、10月3日に始まるユネスコ執行委員会(58カ国で構成)で審議される。
 同案によると、作業部会は最大で計18の加盟国とユネスコ事務局で構成し、年内に設置する。世界の記憶は現在、事務局長が諮問委員会の勧告を追認する形で登録を決めており、「不透明で政治介入を招く」との批判があった。作業部会は新たな審査や登録のあり方を再検討し、来年5月に勧告を実施。事務局は勧告を元に改革案を策定し、来年10月の執行委員会で承認を得たい構えだ。
 世界の記憶見直しで、ユネスコのアズレ事務局長が「行動計画」案を示すのは今回で2度目。今春の執行委員会で年内の改革を目指す案を示したが、「加盟国参加の仕組みが不十分」などの意見が相次ぎ、再提出を迫られた。
 世界の記憶では、中国申請の「南京大虐殺文書」が事実関係で疑義が示されたにもかかわらず、登録が決定。さらに昨年10月には、日中韓の民間団体などが申請した慰安婦関係資料をめぐって政治的緊張が高まり、登録審査が延期になった。アズレ事務局長は昨年秋の就任後、ユネスコの「政治化」阻止を掲げて改革を公約。日本政府も制度見直しを強く求めてきた。
 ユネスコは改革方針が定まるまで、世界の記憶で新規申請は受け付けない方針のため、申請再開は2020年以降にずれこむことになった。慰安婦関係資料の審査も実施のめどは立っていない。
【用語解説】世界の記憶(世界記憶遺産)
 重要な歴史文書や映像フィルムへの認識を高め、保存や開示を促すためにユネスコが登録する事業で、1992年に開始。審査は2年に1度行われ、民間団体や個人も申請できる。これまでにフランスの「人権宣言」、ドイツの「ゲーテの直筆文学作品、日記、手紙等」、日本の「御堂(みどう)関白記」など400件以上が登録された。