プーチン氏発言に日本は静観 「思いつき」、安倍晋三首相の面前に不快感も

前提なし平和条約
東方経済フォーラム全体会合で、発言後、ロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍晋三首相。左は中国の習近平国家主席=12日午後、ロシア・ウラジオストク(古厩正樹撮影)

 ロシアのプーチン大統領が前提条件をつけずに年内の平和条約締結を提案した発言について、日本政府は基本的に静観する構えだ。プーチン氏自身が言うように「思いつき」の側面が強く、ロシアはこれまでも北方領土の領有権を棚上げして日本からの経済協力の引き出しを狙ってきた。ただ、安倍晋三首相が東方経済フォーラムで講演した後の発言だけに、新たな揺さぶりの可能性も排除できない上、日本政府としては不快感も隠せない。

 安倍首相は講演で、22回目となった10日の日露首脳会談に触れ、両首脳間で領土問題を解決して、日露平和条約を締結する決意を改めて示した。その上で「われわれの子供たちも、われわれの世代を悩ませた同じ日露関係の膠着(こうちゃく)でこれ以上、延々と悩ませてはならない」と訴えた。

 10日の会談で両首脳は、北方四島での共同経済活動に関し、温室野菜栽培など5項目の実施に向けたロードマップ(行程表)で合意したばかり。事前調整では、首脳会談で合意できないとの悲観的な見方も出ていたが、直前にロシア側が態度を一転させた。共同記者発表では、プーチン氏は領土問題について「短期間で解決できると考えるのは稚拙だ」「双方が受け入れ可能な解決策を模索する用意がある」と語っていた。

 プーチン氏の発言は唐突で真逆のようにみえるが、日本から極東地域への投資が思うように進んでいないことへのいらだちから、領土問題に揺さぶりをかけた見方もある。

 平成28年5月の日露首脳会談で、首相が提案した8項目の経済協力プランをめぐっては、政府主導で採算性を重視しない内容との指摘もあり、日本企業の関心は必ずしも高くない。

 経済協力に参画する日本企業関係者からは「株主がいる以上、収益が上がらないロシアとの事業に投資はしにくい」(幹部)との声もある。

 政府高官は今回のプーチン氏の発言について「無理だと知りながら発言して、日本の反応をみている可能性がある。反応するのもばからしい」と述べ、突き放す姿勢を示した。(ウラジオストク 田北真樹子、小川真由美)