ミャンマーでロイター通信の2記者に実刑 スー・チー氏の沈黙に民主化後退の懸念 - 産経ニュース

ミャンマーでロイター通信の2記者に実刑 スー・チー氏の沈黙に民主化後退の懸念

5日、バングラデシュ南東部コックスバザールで、ロイター通信の記者2人に対する実刑判決に抗議するロヒンギャ難民ら(ロイター)
 【シンガポール=吉村英輝】ミャンマーの裁判所が3日、ロイター通信の記者2人に、国家機密法違反の罪で実刑判決を言い渡したことで、欧米諸国や人権団体からは、報道の自由の侵害を懸念する声が上がる。だが、同国民主化のシンボル的存在であるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相は、沈黙したままだ。
 「彼らは無実。ジャーナリストとしての仕事をしただけだ」。有罪となった記者の一人、チョー・ソー・ウー氏(28)の妻は4日、最大都市ヤンゴンで記者会見し、こう訴えた。3歳の娘と夫の帰宅を待つ。もう一人のワ・ロン氏(32)の妻は、先月に第1子の娘を出産したばかりという。
 ミャンマーは三審制で、今回は1審。確定までには時間がかかりそうだ。
 2人は、西部ラカイン州で昨年、イスラム教徒少数民族ロヒンギャ10人が殺害された事案を取材。12月に警察官から“秘密裏”に面会場所のレストランに呼び出されて資料を受け取り、外に出たところで別の警察官に逮捕された。
 2人を知る現地のベテラン記者は「資料を見る前に逮捕された。法律に従い公正な裁判を受ければ無罪となるはずだ」と、冷静な態度をみせていた。市民にはロヒンギャへの差別意識もあり、批判しにくい事情もあったようだ。
 しかし、判決を受け、現地記者らは「報道の自由に深刻な脅威を与える」と懸念を表明し始めた。
 裁判では、記者逮捕に関わった警察官が今年4月、逮捕は「警察が仕組んだわなだった」と証言している。だが、この警察官もその後、規律違反に問われて禁錮1年の判決を受け、ヤンゴンの刑務所に収監された。
 裁判所は「資料に治安部隊の配置場所などが記されていた」「治安を悪化させる目的で資料を入手した」などとする検察側の主張を認定。収監された警察官の証言は考慮されなかった。
 一方、2人が追及したロヒンギャ10人の殺害をめぐっては、ミャンマー国軍が1月、兵士ら治安要員が関与していたと認め、4月に7人へ実刑判決が下った。
 また、ロイターは、国軍傘下の出版部門が7月に発行した書籍内の写真に、ロヒンギャをめぐる歴史紹介で「フェイク(偽)写真」が使われていると指摘。国軍は一部を認めて謝罪に追い込まれた。
 ロイターは、ミャンマー政府との軋轢(あつれき)を強める半面、報道を通じて民主主義の推進に実績を残しているのは事実だ。
 ミャンマー政府報道官は今月7日、2人への判決に「政府としてコメントしない」としながら、「ミャンマーは民主化への過渡期」にあるとして司法制度の欠陥も認めた。
 米国のペンス副大統領は「投獄ではなく、称賛されるべきだ」と2人を擁護。バチェレ国連人権高等弁務官は「裁判は茶番だった」とミャンマーの法治主義に疑念の目を向ける。在ヤンゴンの日本大使館によると、日本政府はこの件でコメントを出していない。