【コリア実況中継!】アジア大会「金」選手の兵役逃れに冷たい視線 Kポップアイドルはどうなの? - 産経ニュース

【コリア実況中継!】アジア大会「金」選手の兵役逃れに冷たい視線 Kポップアイドルはどうなの?

ジャカルタ・アジア大会で優勝した韓国ナイン。一部選手に対し、大会を利用した「兵役逃れ」の批判が高まった(松永渉平撮影)
1日の決勝で、日本チーム(手前)を破った韓国(奥)。一部選手に対し、韓国国内で大会を利用した「兵役逃れ」の批判が高まった=ジャカルタ(共同)
1日、ジャカルタ・アジア大会のサッカー男子で金メダルを手にした韓国の孫興民選手。兵役免除の特例措置が適用される(聯合=共同)
1日、決勝で日本チーム(奥)に勝利した韓国。一部選手に対し、韓国国内で大会を利用した「兵役逃れ」の批判が高まった=ジャカルタ(共同)
 2日に閉幕したジャカルタ・アジア大会で、宿敵日本を決勝で破り金メダルを獲得した韓国の野球代表選手らに、韓国国内で冷たい視線が注がれている。代表選手が大会を利用して「兵役逃れ」を図った、と批判されているためだ。国際大会で規定以上の成績を修めたスポーツ選手らに適用される兵役免除の特例措置は、その範囲をめぐって半世紀近く議論が繰り返されてきた。「海外で活躍する人気アイドルグループも免除すべき」との声が国会議員からも上がるなど、国中を巻き込んだ“政策論争”に発展している。(外信部 時吉達也)
「恥ずかしい金メダル」
 韓国代表のエース、梁 ●(=王へんに玄)種(ヤン・ヒョンジョン)選手は3日の帰国時、大会中の率直な胸の内を報道陣に明かした。「金メダルを獲得しても、世論はこんなに批判的なのかと。がっかりしたのは事実です…」
 今回の野球競技では、社会人野球の選手で構成される日本代表など、各国がアマチュア主体の編成となるなか、韓国代表は国内プロリーグの日程を中断し、プロ中心のチームを編成。決勝で日本を3-0で破り、大会3連覇を果たした。
 しかし、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など過去の国際大会で代表の戦いぶりに熱狂した姿とは対照的に、国民から選手らに大きな声援が送られることはなかった。問題となったのは、一部選手が国民の義務である軍への入隊時期をあえて遅らせ、大会優勝が条件となる兵役免除を図ったことだった。
 一線で活躍できる期間が短いスポーツ選手らにとって、2年弱の期間を軍で過ごすことの影響は小さくない。そのため、スポーツや芸術分野の国際大会で好成績を収めた若者を対象に、国威発揚に寄与したとして兵役義務が免除する規定が設けられている。スポーツの場合は五輪で3位以内、アジア大会で1位を獲得し、チーム競技の場合は実際に出場することが条件となる。今回の大会でも野球9人、サッカー20人を含む42人が免除されることになった。
 ただ、野球の場合には、有力選手は入隊後、軍傘下のチームに所属する形で国内プロリーグに出場し続けることも可能だ。今回の代表チームの中にはこうした手続きを放棄し、露骨に兵役免除を狙う選手もいたことから「恥ずかしい金メダル」などと批判が高まった。
日韓W杯、WBC…活躍次第で改正繰り返し
 1973年に始まり、45年続いている兵役免除の特例措置は、公平性をめぐってたびたび議論が起こった。当初は国際大会の優勝者らのほか、韓国体育大の成績上位10%などにも与えられたが、ソウル五輪(88年)などを経て対象となる有力選手が増加したことから、90年に五輪メダリストとアジア大会の金メダリストに限定された。
 しかし、国際大会での代表選手の活躍いかんで、制度改正はその後も繰り返された。2002年のサッカー日韓ワールドカップや06年のWBCでの韓国代表の活躍を受け、両大会が適用対象に一時含まれた時期もあった。韓国サッカー代表が銅メダルを獲得した12年のロンドン五輪では、2-0で迎えた3位決定戦の終盤、4分間のみ途中出場した選手が兵役免除を受けたことで“制度縮小論”が台頭した。
 韓国の世論調査会社が今月5日に実施した調査では、「制度を廃止すべき」または「特例を受ける人数を減らすべき」だとの回答が合わせて52・4%に上った。
「防弾少年団」メンバーは国威発揚に寄与?
 一方、スポーツやクラシック音楽などの古典芸能に限られている特例適用の対象を、大衆音楽などそのほかの分野に拡大すべきだとする意見も広がっている。
 「『防弾少年団』を見なさい。国家代表の中でも最高の代表じゃないか」
 野党第2党「正しい未来党」の議員が名前を挙げたのは、米誌掲載の人気チャート「ビルボード200」で5月、韓国の歌手として初の1位を獲得した男性アイドルグループ「BTS(防弾少年団)」。メンバーはいずれも20代で、歴代の人気芸能人と同様に、芸能活動を休止して入隊することになるのは時間の問題となる。
 こうした議論を受け、兵役を管轄する兵役庁は制度を全面的に見直すと表明。担当官庁の文化体育観光省も5日、制度改正に向けた作業部会を設置した。李洛淵(イ・ナギョン)首相は4日、閣議で「国民の知恵を集めて(兵役庁が)合理的な改善案を出すことを願う」と言及した。
 「五輪やアジア競技大会そのものよりも、数人の選手の幸運と不運が話題になる社会を正常といえるだろうか」(韓国紙中央日報社説)。国防族の議員からは「免除特例をすべて廃止し、50歳までに服務すべき」との意見も出るなど、議論百出となっている今回の問題。20年の東京五輪で日本代表と対戦する選手のパフォーマンスに影響を及ぼす可能性もあり、まったくのひとごとというわけではなさそうだ。